小林よしのり氏が疑念を抱く「こども家庭庁」の裏。隠す気もなくなってきた統一協会の恐ろしさ

 

安倍氏がベタボメした統一協会のいう「伝統的家族観」

また、「こども家庭庁」という名称では、子供は親とは別の人格を持ち、個人として尊重されるべき存在であるという当然の視点が薄れ、子供を親に付随する要素と見たり、家庭という枠組みの中だけに収めたりしようとする意識を感じるという理由もあった。

そしてさらには、子供は家庭だけではなく、社会で守り育てるべき存在だという理由があった。

家庭だけで子育てを背負おうとすればするほど、かえって親が追い詰められ、その皺寄せが子供に行ってしまうというケースは、枚挙にいとまがない。

家庭は大事で、支援が必要なのはもちろんではあるが、学校や地域などのコミュニティ・共同体も同様かそれ以上に大事で、支援が必要である。

それならば「こども家庭学校地域コミュニティ共同体庁」とでもした方がいいということになるわけで、それを「こども家庭庁」とすると、子供の問題を全て家庭だけに押し付けるような意味合いになってしまうのだ。

名称ひとつにしてもこれだけの慎重な議論があって、「こども庁」の名が採用されていた。「こども」とひらがな表記にしたのも、子供のための役所なのだから子供に読めるようにというこだわりだったという。

ところがそれまでの経緯を全部すっ飛ばして、いきなり「こども家庭庁」の名称がゴリ押しされ、岸田はそれをあっさり受け入れた。

そのとき共同通信は、岸田政権が「伝統的家族観を重視する自民党内保守派に配慮」して、名称変更の調整に入ったと報じた。

そして、実際には自民党内にも「こども庁」でいきたいと声を上げた議員は多くいたにもかかわらず、岸田は何の議論も説明もしないまま、「こども家庭庁」への名称変更を閣議決定してしまった。

岸田は、「子供を第一に」ではなく、「自民党内保守派を第一に」考えたのだ。

この時点では「伝統的家族観を重視する自民党内保守派」、すなわち安倍晋三とその一派の力はまだそれほどまでに大きかったわけである。

ところがそれからわずか7か月後、安倍晋三の暗殺で事態は劇的に変わった。

自民党の「保守派」が言っていた「伝統的家族観」というのは、実は統一協会の教義だったことが明るみに出されたのだ!

山上徹也が見て殺害を決意したとされる、統一協会系団体・UPF(天宙平和連合)へのビデオメッセージで、安倍は統一協会現総裁の韓鶴子らに「敬意を表します」とした上で、こんな賛辞を述べていた。

「UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を高く評価いたします。世界人権宣言にあるように、家庭は、社会の自然かつ基礎的集団単位としての普遍的価値をもっております。偏った価値観を、社会革命運動として展開する動きに警戒しましょう」

ここでいう「家庭」の「普遍的価値」とは、「子を産み育てること」であり、しかも子を育て家庭を守る役割の全ては、女性が負担するというものだ。

そしてここでいう「偏った価値観」とは「男女同権」であり、さらに「偏った価値観」の最たるものは「同性婚」というわけだ。

それこそが安倍がベタボメした、統一協会のいう「伝統的家族観」なるものなのだ。

安倍は無防備にも「社会革命運動」という言葉を使っているが、普通は家庭について誰がどんな価値観を持とうが、それを「社会革命運動」と見なして「警戒」しようなんて大げさな発想にはならないものだ。

実は、「男女平等」や「LGBTの権利拡大」などの主張に対して「共産主義革命の思想だ!」などと非難するのは、統一協会信者のお決まりのパターンなのである。

安倍はこの時、統一協会信者とほとんど同じ感覚になっていたのだ。

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