特別支援学校卒業後の重度障がい者の「進路」にあと少しの柔軟性を

 

その公的費用の目的を考えた場合、短期的な視点でその人への対応と考えるか、長期的な視点でその人の可能性や幸福を考えるかは自治体次第である。そこに私は、福祉行政の中で「学び」を取り入れることにより、人が活性化することの好循環を説明させてもらっているが、それが響くかどうかも担当者の感性に委ねるところだ。

そんな中で、重度障がい者が学びを継続し、次の可能性を考えるために準備をしていくのを「普通に」考えられないか、という従来の主張に、最近はもう一つの考えが加わった。それは社会の可能性はよい意味で予想不可能であるということである。

発語が出来ない、身体がほぼ動かない重度障がいの方が視線入力や体の一部の小さな筋肉の動きでコンピュータを動かし、自分の気持ちを文字化したり、音声化することで、他者とのコミュニケーションを豊かにすることは、数年前までは考えられないことだった。この急速なコミュニケーションツールの発展は、みんなの大学校で学生になることを可能した。

そして現在、さらに生成AIの利用やチャットGPTの活用を考えると、重度障がいによりコミュニケーションに制限があったとしても、その制限を乗り越えていく可能性は極めて高い。その際に必要となってくるのが一般的な教養や「考える」ということ行為の経験。みんなの大学校は、その時のための準備の場でもある。

だからこそ、進路先としてみんなの大学校やほかの学びの場の提供をしているところを普通の選択肢として認識してほしいと思う。この学びは未来の可能性を広げる準備だと認識されたい。生徒本人はもちろん高等部の先生にも学びの継続を基本に進路を一緒に考えていきたい。

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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