世界にバレた日本の防衛能力。Jアラート騒動が証明した「真実」

 

その後の台湾では、蒋介石死去を受けて総統に就任した息子の蒋経国が、粘り強く丁寧に右翼の独裁主義者を失脚させて無力化、後には大陸選出の終身議員も引退させて、台湾民主化の基盤を作ったのでした。その結果として、非常に不思議な「現状」が確立しました。

つまり「世界の主要国からは国家として認められていない」が、「通商の相手としては事実上は国家として遇されている」「ほぼ完全な二大政党制による民主主義と言論の自由、基本的人権が達成されている」「最先端の半導体やエレクトロニクス実装技術では世界最高の競争力がある」「独立志向の民進党と、対中連携論の国民党が拮抗」「中国は統一へ向けて圧迫をしているが、事実上西側の抑止力が拮抗」というのが現状です。

この台湾の現状というのは、非常に不安定なものですし、理念的には世界史の中でも例外的な存在です。危険極まりないとも言えるわけですが、それでも、この「現状」というのは民選の総統(大統領)が統治する民主主義台湾が確立した1996年以降は、紆余曲折を経て「現状維持」がされています。2023年4月の現在は、中国側の事情によりこの「現状維持」がゆらぎ始めていますが、それでも国際社会として「現状維持」が最善手だということに変化はないと思われます。

台湾の話を延々としましたが、あくまで本題は北朝鮮です。北朝鮮の問題は、台湾とは大きく異なっています。

まず、成り立ちとしては、第二次大戦の戦後処理として、東西陣営の対立の結果、南北の分裂国家となったという経緯があります。もっと具体的に言えば、日本がポツダム宣言を受諾して統治を放棄する際に、天皇制維持だけを至上命題としたことでこれに引きずられ、日本の判断や統治行為として「韓半島の独立」をさせなかったという不作為、これに1945年時点の米国が韓半島の戦略的な位置づけを理解しなかったという不作為が重なった結果、ソ連が「日ソ中立条約を一方的に破り」また「ヤルタ協定を拡大解釈して一方的に満州から軍を南下させた」結果として、成立してしまったわけです。

つまり、米ソが東西からナチスドイツを挟撃した結果として成立した、欧州の東西分割とは少し経緯が異なります。一言で言えば、日本と米国の無責任な対応の結果、分割がされてしまったとも言えます。

更に、この北朝鮮の問題を複雑にしているのが、1950年の朝鮮戦争の経緯です。開戦に関しては、金日成の冒険主義を「中国が黙認し、ソ連が傍観した」ために起きたわけですが、その後、参戦した国連軍(事実上は米軍)が、マッカーサーの独断で「38度線まで押し返す」だけでなく、北朝鮮の領域へ勝手に攻め込んで、中国の参戦を招き、結果的に38度線で戦線が膠着して「休戦」という込み入った結果となっているわけです。

その後は、ソ連型の計画経済と、資源の利用で経済的に先行していた北朝鮮でしたが、人材育成の失敗、ソ連の支援の先細り、中国との複雑な関係などを経て、徐々に国力が衰退。反対に韓国は近代化、産業化、民主化に成功して国力が増大して、両国の均衡が崩れました。

そんな中で、北朝鮮は「ほぼ完全な世襲君主制独裁国家」となる中で、「経済的には孤立」するに至りました。国内から伝わって来るのは深刻な人権危機のニュースが多くなっています。

一方で、韓国の国内政治では、「民族統一は悲願であり、これを妨害するアメリカと日本には冷淡」な左派勢力と、「現実的に統一は不可能としつつ、西側同盟にフレンドリー」な保守勢力に分裂していきました。

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