世界にバレた日本の防衛能力。Jアラート騒動が証明した「真実」

 

そんな中で起きたのが、4月13日(木)に発生した弾道ミサイル発射でした。この事件ですが、具体的には3つの特徴があったと考えられます。

  • 「事前に兆候が察知できなかった」→「固形燃料ロケットの可能性など」
  • 「当初は北海道を標的としていた」→「軌道修正機能を使って故意に脅した可能性」
  • 「正確な落下点が不明」→「同じく軌道修正機能を使って日本の追尾能力を試した可能性」

ということです。その上で、現時点では、

  • 「仮に北朝鮮がカラの弾頭を載せて、脅迫目的で日本の領土にミサイルを撃ち込んだ場合に日本の追尾、迎撃能力は足りていない」

ということを、かなりのレベルで証明してしまったということになると思います。これは、大きな現状の変更です。ですが、いわゆる「島を強奪する」とか、実際に「ある土地を強行併合する」といった「現状変更」と違って、それ自体がストレートに戦争の挑発となって国連が動き出すというものではありません。日本の場合は、国連安保理に緊急招集を依頼したようですが、今回は安保理は動いていません。

ですが、軍事的には明らかに現状の変更は進んでいます。

今回は、Jアラートの運用がおかしく、どう考えても危険が去ったにもかかわらず、メディアも政府もズルズル危機対応を引っ張ってしまった結果、世論からは「失笑を買う」ことになり、何となく「現状が変わってきている」ことは話題になっていません。では一体どうしたら良いのでしょうか?

少なくとも、現状を維持する、つまり北朝鮮が日本を相手に軍事的威嚇をエスカレートして、その結果として日本の安全が著しく脅かされることを防ぐ、要するに現在の日本人が持っている「当面の平和な状態への安心感」を維持するにはどうしたら良いのでしょうか?

4点、問題提起したいと思います。

1つ目は、俗に言う敵基地攻撃能力というのは、余り役に立たないということです。航空能力を高めて空爆を可能にするとか、潜水艦から敵基地攻撃の可能なミサイル発射ができるようにするというのは、物理的には可能です。ですが、そうした能力の保有を宣言したら、北朝鮮は「では怖いのでミサイルの実験をエスカレートするのは止めよう」と考えるでしょうか?これはノーだと思います。

日本が、攻撃能力を「持ってしまったために」本当に「先制攻撃」を検討し、しかし出来ないという中で「悶え苦しむ姿」へと追い込むことで、政治的に相手を消耗させることが可能になるからです。日本が相当に真剣に検討すれば、先制攻撃であるとか、植民地回復の暴力的侵略の再開、日本軍国主義の亡霊復活などというキャンペーンが加速し、その効果としては、例えば韓国、中国だけでなく、日本の世論をも動揺させることが可能になってしまいます。

2点目としては迎撃の精度向上です。今回の事態を受けて、改めて自衛隊では察知能力と迎撃能力の再検討をしていると思います。相手に知られては能力の意味がなくなる部分については、機密扱いになると思いますが、その外側の一般論の部分については、透明性を高めて世論に理解してもらうという姿勢が必要です。秋田のイージス・アショアの問題のように、印象論だけで大きな判断が進んだり引っ込んだりというような滑稽なドラマは止めていただきたいと思います。

その上で、必要であり、また可能である措置に関しては、しっかり進めることはあっていいと思います。

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