世界にバレた日本の防衛能力。Jアラート騒動が証明した「真実」

 

更に、ロシアがウクライナに侵攻し、中国が習近平の3期目に突入した現在では、次のような不安定度が増しています。

1)中国は、北に改革開放を勧めることもなく、核開発に強く不快感を表明することもなく、同盟国として援助を続行。その一方で、人的交流は制限。

2)ロシアは、北の労働力に依存するなど、経済的な利害関係をより深めている。

3)韓国の尹錫悦政権は、かなり顕著な親米親日の立場を取り、北との対立を拡大している。

そんな中で、北朝鮮としては次のような「不安定」を抱え込んでいると考えられます。

a)とりあえず中国とロシアとの通商や援助で、カネは回るようになっている。だが、中国に政変が起きたり、ロシアがウクライナで敗北するなどの場合は、両国に依存した現状は即時に不安定化する。19世紀末からのクセとして、国境を接するロシアと中国には依存と同時に警戒感を抱いていると考えられる。

b)コロナ明けの時期に差し掛かる中で、多少はカネの回る社会となったが、そのことは、世界情勢の情報が流入することを意味する。国民を情報から完全な遮断することは既に不可能であり、何らかの求心力維持政策を投入し続けて政権を維持するということは、余計に急務となっている。

c)分断国家のもう一つである韓国が、日本以上にグローバル経済への順応性を見せて、一人あたりのGDPで成長を見せている。このままの勢いで韓国が成長するようなら、北の「吸収合併」の可能性が現実のものとなることもある。

d)日本の遊技業界、飲食業界などによる「送金」については、コロナ禍と日本の長期的な経済衰退を受けて、流れが細っていることが考えられる。

ここまでは、北の視点から考察した「不安定」ですが、では、北を取り巻く環境ということでは、具体的に次の2つの「不安定」を指摘できると思います。

e)北朝鮮のNPT(「核拡散防止条約」)への参加は、90年代に一旦脱退して、その後復帰、更に核開発を続ける中で再度脱退の動きをする中で、事実上その「脱退の動きの受理」が止まっている、つまり加入・非加入のステイタスが曖昧となっている。同時に、NPT体制を管理するIAEAはウクライナにおけるロシアやワグネルによる、サポリージャ原発等への攻撃に対応するので手一杯。従って、NPTの枠組みを使って、北の核開発を止めるというアプローチは、機能していない。

f)北の核開発を止める枠組みとしては、「六カ国協議」あるいは「六者会合」があったが、西側、つまり日本、米国、韓国としては、ロシアを交渉の協力者として位置づけることは今は不可能。また中国もそのロシアと部分的に同調する中では、「六者会合」の枠組みは全く機能しない。

という状況があります。このように状況が不安定化へむけて「動いている(aからd)」中で、核開発を止める枠組み(eとf)が全く機能しないという中で、ここ一連の北朝鮮による核弾頭開発と弾道ミサイル開発が続いていると考えられます。

そうなると、この問題については「現状維持」というのは大変に難しいということになります。事態が動いており、北朝鮮の側からすれば国家が安定して存立する条件が時間とともに流動化していると感じられ、だからこそ、これに対する対抗として武装、具体的には核弾頭と弾道ミサイルの開発を拡大し続けるということで現状変更が進んでいることになります。

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