韓国に押し寄せたフェミニズムの大波
こうした儒教にもとずく男尊女卑の気風が韓国では長く続いており、これに対する反発が渦巻いていました。そして2016年、ソウル・江南駅付近で女性殺人事件が起こります。この犯人が「女が憎い。女なら誰でも良かった」と語ったことから、ミソジニー(女性嫌悪)の犯罪として位置づけられ、フェミニズム運動が一気に広がっていきました。
その後、『82年生まれ、キム・ジヨン』など、フェミニズムに関連した小説も大ヒットしました。
また、この時期には日本のフェミニズムの大御所にして「おひとりさま」を世に広めた、上野千鶴子氏の著作が韓国でもベストセラーになっています。
こうしてフェミニズムの大波が韓国に押し寄せたことで、韓国の男性は「生まれながらにして女性差別者」という気運が高まると同時に、男性による過去の女性蔑視的な言動を糾弾するMeeToo運動も活発に展開されるようになりました。
その結果、男性側も女性側も結婚意識が薄れ、非婚化が進み、急激な出生率低下に繋がったと言われています。
上野千鶴子氏は著書『発情装置 新板』(岩波書店)の「自著解題」で、欧米ではフェミニズムの領導によって「性革命」が起こり、離婚率と婚外子出生率が増えましたが、日本ではこうしたことの代わりに、非婚率と出生率の低下が起こったと述べています。
非婚率の上昇と出生率の低下を、わたしは「性革命」の二つの指標──離婚率の上昇と婚外子出生率の上昇──の、日本型の機能的等価物だと考えている。
(『発情装置』 新版)
こうしてみると、フェミニズムが韓国で猛威を振るったことによって、非婚と出生率の低下が起こることは必然だったといっていいでしょう。
ちなみに以前のメルマガでも取り上げたように、上野千鶴子氏の著作は現在、中国でもブームになっています。
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● 上野千鶴子さんの「フェミニズム本」が中国でブーム 家父長制が根強い国で受け入れられる背景とは
中国も長年の一人っ子政策による今後の少子高齢化を非常に警戒しており、いまや3人生むことを奨励し、子育てする家の家計を圧迫する塾を廃止するなど、なんとかして出生率を上昇させることに躍起となっています。しかし、上野千鶴子氏の著作が流行り、「おひとりさま」が肯定され、「性革命」によって韓国や日本と同様、非婚化と出生率の低下へと邁進することになるでしょう。
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