住所と名前が相当ヤバい日本人。炙り出されたマイナンバーカード問題の深刻さ

Tokyo,,Japan,-,18,August,2021?my,Number,Card,,,Japanese
 

連日のように報道されている、マイナンバーカードを巡るトラブルの数々。その大きな原因のひとつとして我が国の住所表記が挙げられ、ネット上でも議論が活発化しています。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、問題の根本は「入力データの不揃い」にあると指摘。さらにそのデータである日本の住所や氏名が、どれだけ「煩雑」なものであるかを詳しく解説しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年6月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

住所ばかりか氏名もヤバい。マイナカード運用が上手くいかない当然の訳

マイナカードの運用がうまく行っていないようですが、コンピュータのシステムというのは、Aと入力したらBを返すというようなロジックを組み立てる中で、キチンとした「要件定義」を行う必要があるわけです。そのためには、入力するデータをコンピュータに使いやすいようにクリーンにしておく必要があります。クリーンというのは、間違いがないということであり、同時にエラーを起こさないように標準化がされていることも大事です。具体的には様々な作業を繰り返して最終的にクリーンにして行くことになります。

今回の問題は、「そもそも入力するデータがクリーンでない」ということにあると思います。

そもそも名前のデータがクリーンではありません。

まず日本人の場合ですが、マイナカードに入るのは、漢字(またはカナ混じり)の戸籍名だけです。恐ろしいことに、カタカナのフリガナも、英文ローマ字表記もありません。フリガナがないということは、銀行の口座名義人との自動紐付けも、名寄せによるチェックもできないということです。

また英文ローマ字表記がないということは、パスポートの英文表記との照合は不可能です。仮に、将来、日本円への不信感が増大して、日本人による資産の海外逃避が大規模で発生し、これを全世界対象の財産税で補足するなどという場合にも、幅広く網を張るような使い方には全く対応できません。

それ以前の問題として、現在の戸籍には名前のフリガナがないし、住民票の場合もある自治体とない自治体があるという状況があります。

恐らく今後は、住民票にはフリガナを入れる方向で統一されると思いますが、そうなった場合に「新たにフリガナを入れる」手続きをどうするのかというのは、結構難しい問題です。親の付けたキラキラネームを変えたい人、子どもの意見を無視して宗教的な理由で妙な読み方を強制したい親なども、出てきてトラブルに発展しそうです。

問題は、日本の場合に「成人になっても、自分の戸籍名を変更するのは簡単でない」ということです。マイナンバーができれば、履歴が追いやすくなるとは思うのですが、改名の履歴管理に対応できるようなデータのスペースを取っているのか分かりません。いずれにしても、フリガナを運用するならするで、ピシッと対応しないとそれだけでグタグタになりそうです。

一方で外国人の場合ですが、本名と通称を併記できるようになっています。ですが、日本語とアルファベットしか対応していないとか、通称だけではダメで、本名を書かねばならないので、国籍が入国管理業務とは関係ないあちらこちらでバレてしまい、結果的に人権が脅かされる問題などがあるようです。それ以前の問題として、マイナカードのシステムとしては、「本名と通称がセットで1つのコメント」という運用のようで、仮にそうなると名寄せサーチなどはカオスになりそうです。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 住所と名前が相当ヤバい日本人。炙り出されたマイナンバーカード問題の深刻さ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け