とすると、民権の今日的有り様としてのリベラルの中心であるべき立憲民主党が「中道」などというタワゴトを吐いて自民党への擦り寄り度合いを維新や国民や公明などと競い合うという愚行に出ているくらい見当違いの話はない。そうではなくて、明治以来の民権的な思想と政治の闘いの全歴史を受け継いで、民権の今日版としてのリベラルとはこういうことなのだと柱を立て直すのでなければならない。
そのための一助として、今号からしばらくの間、日本的なリベラルとしての民権の歴史を遡る旅に出ることにする。そうは言っても、浅学非才の私ごときが出来ることは限られていて、差し当たり手元にある、
- 家永三郎編『日本平和論体系』全10巻(日本図書センター、1993年~刊)
- 鹿野正直『近代日本思想案内』(岩波文庫別冊、1999年刊)
- 多田道太郎編『自由主義』(筑摩書房・現代日本思想体系第18巻、1965年刊)
――を手掛かりに模索しつつ、理解した範囲を少しずつ断続連載していくこととする。
この(1)~(3)が挙げている人物と収録もしくは紹介主著の一部を一覧表にすると下記のようである。(1)の序文で家永は、反戦・反軍・平和思想の歴史を振り返るについて、7つの大まかな時代区分を立てているので、ほぼそれに従うことにする。(2)は特に民権思想を辿ったものではないが、その中で本稿の趣旨に合う記述を拾った。既出の人名は重複して記載していないので、特に(3)では人名が少なくなっている。この表は、今後さらに多くの文献を参照することで増え続けることになるだろう。
―――家永――― ―――鹿野――― ―――多田―――
■前近代
・安藤昌益
1703~1762
「統道真伝」
■自由民権期
・中江兆民 ・福沢諭吉
1847~1901 1835~1901
三酔人経綸問答 学問のすすめ
・植木枝盛 ・西周
1857~1892 1829~1897
世界大野蛮論 国民気風論
民権自由論・田口卯吉
1855~1905
日本開化小史・板垣退助
1837~1919
民撰議院設立建白書
■日清戦争前後
・安部磯雄
1865~1949
社会民主党宣言
・北村透谷
1868~1894
『平和』発行之辞
明治文学管見
・幸徳秋水
1871~1911
帝国主義
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