“広告塔”にするのはNG。社外取締役に「女性有名人」を就ける激ヤバ人事の実態

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6月5日、2030年までに東証プライム企業の女性役員比率を30%以上とする目標を含む「女性版骨太の方針2023」の原案を示した政府。主要先進国の中でも極端に女性役員が少ない我が国ですが、ただただ進めればいいという話ではないようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、2つにカテゴライズできるという女性役員の各々について解説。特に冷泉さんが「悪い女性役員」とする社外取締役に有名女性を起用する人事については、世界の資本主義の常識から見て違反行為に当たるとして、今すぐやめるべきと批判しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年6月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

女性役員30%構想。良い役員、良くない役員

岸田政権は、東証「プライム市場」の上場企業に対し、女性役員の比率を2030年までに30%以上とする目標を掲げたそうです。何でも社会全体で女性の登用促進に向けた機運を醸成する狙いがあるのだそうです。単なるスローガンに終わらないように、東証サイドと協議し、年内にこうした内容を東証の規則に入れる構想もあるようです。

良いことだと思います。とにかく、均等法自体は1986年に施行されたわけですが、同時に年功序列制度を壊すことをしなかったために、86年から総合職で入った女性が、20年とか25年勤続するのを待たないと女性の管理職比率が上がらなかったという「苦い経験」があるわけです。

今回も、同じようにやっていたら、女性役員の比率が上がる前に日本経済は沈没してしまって「間に合わない」ということになるかもしれません。どんどん加速させれば良いと思います。

ですが、何でもやればいいというものではありません。

そこには、良い「女性役員」と悪い「女性役員」があると思います。

まず良い方ですが、これはラインの管理職の上級ポジションをいわゆる「執行役員」にして、取締役会に直結させて権限を与える、これは「仕事ができる人」をどんどん登用すればいいと思います。本人は「忙しくなって家庭と両立しない」とか「ストレスが大変そう」などと言って、消極的になるかもしれませんが、とにかく能力が高く、その部門の業務の隅々を知り、将来を見通している人はドンドン抜擢したら良いと思います。

その一方で、問題なのが「社外役員」です。正確に言うと「社外取締役」です。こちらは、現在でも比較的女性を配置している企業が多いのですが、一般的に大きな問題があります。

まず、言葉の定義から入りますが、企業の内部、つまり常勤の場合は「執行役員」と「常勤の取締役」には違いがあります。双方を兼務する場合もあるわけですが、原則として「執行役員」だけの人は従業員ですが、「常勤取締役」は株主総会で委任されているという違いがあります。ですから、給与の位置づけなども違います。

一方で、厳密に言うと「取締役ではない社外役員」というのは普通はありません。取締役でないというのは、株主から委任を受けていないわけですし、社外、つまり非常勤というのは、会社の経営への関与は薄いわけですから、要するに顧問とかアドバイザーのようなものです。ですから、普通は存在しません。

社外役員というのは、実はほぼ100%が社外取締役です。そこに問題があります。どうも一部の日本の企業は、この社外取締役の意味を全く勘違いしているようなのです。社外取締役というのは重要です。

まず、株主から委任を受けて、取締役会が暴走しないか、違法行為をしていないか、経営における公私混同がないかなどを厳密に審査して、問題行動があれば取締役の権限でストップをかけるという役目があります。企業統制というものです。

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