今年だけで1万人以上が国外流出。習近平の帝国化を嫌う富裕層が中国から逃げてゆく

2023.06.21
 

邦人拘束も増加か。7月1日から施行される改正反スパイ法

そして、このような中、ついにスパイ容疑の定義が大幅に拡大された改正反スパイ法が7月1日から施行される。全国人民代表大会の常務委員会は今年4月、2014年に運用が始まった反スパイ法の改正案を可決したが、これによってスパイ行為の範囲がこれまでの“国家機密の提供”に加え、“国家の安全と利益に関わる資料やデータ、文書や物品の提供や窃取”にまで拡大される。

また、その他のスパイ行為など曖昧な表現も依然として残っており、改正法が中国当局によって恣意的に運用され、外国人がさらに拘束される恐れがある。中国の情報機関トップの陳一新・国家安全相は6月、欧米など敵対勢力の浸透、破壊、転覆、分裂活動などを徹底的に抑え込むため、外国のスパイ機関による活動を厳しく取り締まると改正法を積極的に運用していく姿勢を強調した。

そして、これは日本企業にとっても他人事ではない。2014年の反スパイ法が施行されて以降、今日までに拘束された日本人は確認されているだけで17人に上る。今年3月には、大手製薬会社のアステラス製薬所属の50代の日本人男性が帰国直前になって突如拘束されたが、上述の米国人同様に具体的にどのような行為が反スパイ法に違反したのかなど詳しいことは中国当局から一切説明はなく、今後の動向が懸念されている。

昨年秋には、日中友好に積極的に努めたいたにも関わらず、反スパイ法に違反したとして6年の実刑判決を受けた日本人男性が刑期を終え帰国した。2019年には同じく帰国直前に中国近代史を専門とする研究者が同じく帰国直前に一時拘束されたが、中国国内で得たデータや知識を母国に持ち帰り、それが対中政策に活かされることを防止する狙いが中国当局にあると思われる。

「法の支配や遵守」などそもそも存在しない中国

今後、改正法が積極的に運用されることで、中国各地で日本人が拘束されるケースがいっそう増えることだろう。改正法をじっくりと理解し、それを法的に解釈することに意味がないとは言わないが、改正法は中国当局が監視を強化するためのお墨付きでしかない。法律に則って行動するとは言いながらも、憲法の上に共産党がある国家において、法の支配や法の遵守などといったことはそもそも存在しない。改正法の運用状況は、今後の大国間対立の行方によるのだ。

しかし、日中関係が高い確率で悪化する方向で動く中では、拘束される日本人はプラス成長となることだろう。もう、中国依存を減らす、中国から徐々に撤退していくことを日本企業は検討するべきだろう。これにも関わらず、引き続き中国にどっぷりとつかっていては、中国に対して日本の弱点をさらすことになる。日本企業にとって、既に脱中国の時代だ。

image by: Graeme Kennedy / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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