実は水面下で接触していた日本と北朝鮮。拉致被害者問題に「大きな進展」か?

Kim Jong Un, North Korea's leader, arrives at the railway station, for his departure to North Korea, in Vladivostok, Russia, on Friday, April 26, 2019.
 

日本は表面的には核心懸案である日本人拉致問題を解決しようとする意志が強い。同時に北朝鮮と別途対話の窓口を開くことができれば、直ちに自国に脅威となる北朝鮮の核・ミサイル問題で韓米だけに依存せず、自らイニシアチブ(主導権)を握ることもできるとの計算もしているようだ。

これに先立ち5月、岸田文雄首相は異例にも「首脳会談のために(北朝鮮側と)高官級協議をしたい」と公開した。北朝鮮は2日後、外務省次官談話を通じて「日朝両国が互いに会えない理由はない」と答えた。ただし「日本が過去に縛られず、変化した国際的流れと時代にふさわしくお互いをありのまま認める大国的姿勢で新しい決断を下し関係改善の出路を模索しなければならない」と条件も付けた。すると岸田首相は同日、「それ(拉致問題)を具体的に進展させたい」と述べ、改めて日朝首脳会談の意志を強く示した。

日朝両国はこのような気流の中で、高官級協議に先立って数回にわたって実務接触に乗り出したものとみられる。梨花女子大学北朝鮮学科のパク・ウォンゴン教授は「北朝鮮の立場で日本との実務接触が損になることはない」としながらも「ただ日本が望む拉致被害者や核問題については直ちに話したくないだろう」と話す。

続いて「結局、北朝鮮が乗り出す理由は『外交戦』と解釈しなければならない」と指摘した。韓米を中心に北朝鮮を狙った高強度の圧迫が続く中、日本から揺さぶって韓米日協力にまで触れてみるというのが北朝鮮の意図だという。

津田塾大学国際関係学科のパク・ジョンジン教授も「当分南北関係改善の可能性はほとんどない中、北朝鮮の立場では米国とは年内に交渉を再開したいだろう」とし「北朝鮮はこのような苦しい膠着状況で何らかの局面打開に向けた『テストケース』として日本を活用したい気持ちだ」と話した。一部では、北朝鮮が日本の提案を露骨に拒否すれば、自ら拉致被害者問題を認める姿に見えるのではないかと懸念し、対話に乗り出す形だけを取っているという分析もある。

牙山(アサン)政策研究院のチェ・ウンミ研究委員は「拉致問題は例外的に日本と北朝鮮との個別的事案」とし「日本が北朝鮮に別途会う名分になる」と強調した。

米国も拉致問題では日本の声を尊重しているだけに、この問題を契機に日本が別途の対北朝鮮対話の窓口を持とうとしているということだ。パク教授も「結局、日本政府の公式的な対北朝鮮政策は拉致問題、北朝鮮核・ミサイル問題などに対する包括的解決を通じて北朝鮮との関係を正常化するということ」とし「拉致問題は結局(両国が)双務的な関係で対面できる一つの契機になりうる」と強調した。

韓国政府内外では、直ちに北朝鮮と日本が高官級協議に続き、首脳会談まで続けることは容易ではないという観測が支配的だ。拉致問題など主要イシューに対する双方の見解の相違が依然として残っており、北朝鮮が強力な挑発を続けているだけに、日本が北朝鮮に積極的に手を差し伸べることも難しいためだ。北朝鮮の立場からも、ひとまず対話の可能性を残したまま水面下の気流だけを把握しようとする可能性が高い。

南北関係が硬直している状況で、日朝対話が韓国政府にはうれしくないという指摘も出ている。尹錫悦政府は、北朝鮮の挑発に対抗して韓米日3国間協力強化を中心に北朝鮮を圧迫し、結局、北朝鮮が自ら交渉のテーブルにつくようにするという構想を持っている。北朝鮮が拉致問題の解決を望む日本を通じて、このような構想に亀裂を作ろうと試みる意図もあるということだ。(東亜日報ベース)

(無料メルマガ『キムチパワー』2023年7月3日号)

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