第二次世界大戦中に多くのユダヤ人を救ったとして今も語り継がれている「日本のシンドラー」こと杉原千畝(ちうね)。彼の功績は日本人であれば一度は目にしたことがあると思いますが、海外メディアで「過小評価」されていることをご存知でしょうか?今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、香港の有力英字新聞の報道を引きながら、海外メディアの報道に黙っている日本の状況に苦言を呈しながら、杉原千畝の功績について、海外メディアの報道が「一人歩き」してしまうことを懸念しています。
日本のシンドラーに疑問を呈する海外新聞
現在の戦争は完全に情報戦です。国際的に有力な新聞や専門誌に書かれたことが世界の世論をリードします。
それで正義と悪が決められます。日本も加害者として記述されることがあります。
事実でない報道にはきちんと反論することです。「黙っている=認めている」と思う海外の人は多いのです。
本日ご紹介するのは、アジアの代表的な国際新聞である香港サウスチャイナモーニングポストに掲載された8月19日の記事です。
表題「日本のシンドラー、第二次世界大戦で救ったユダヤ人は日本の主張より少なかった可能性」
日本のシンドラーとして知られる外交官の杉原千畝は、ナチスから何千人ものユダヤ人を救ったとして、日本では英雄視されている。
しかし、学者によれば、彼の活動は、イスラエルや米国内のユダヤ人の利益を得るために誇張されたものだという。
多くのイスラエル人と日本人の学者によれば、日本は1940年に「日本のシンドラー」と呼ばれた外交官がリトアニアで行った活動を誇張しユダヤ人の利益を勝ち取ってきたという。
この日本政府の宣伝は、南京大虐殺、従軍慰安婦、強制労働、連合軍捕虜に対する広範な虐待の加害者として非難された軍国主義国家であったことから物語をシフトさせるためという。
ハイファ大学のロテム・カウナー教授が3月に『アメリカン・ヒストリカル・レビュー』誌に発表した論文によれば、「杉原氏は日本では国民的英雄となり、他の多くの国々では美徳の模範とされている」が、ヒロイズムは日本の動機のために「操作」されてきたという。
ユダヤ人であるジンベルク氏は、杉原が人命を救ったことは間違いないが、詳細については判断が難しくその説明は「非常に問題がある」と彼は言う。
「動機の一つとして考えられるのは、日本はユダヤ人がメディア、特にアメリカにおいて影響力があると信じていた。これは安倍晋三首相の下で起こっていたことであり、この動きの背後には明確な政治的思惑があった」と語った。
ホロコースト教育センターの吉田明生神父は、杉原の行動について無批判に語られるようになった物語の要素が完全に辻褄が合っていないことを認めている。
「杉原氏のビザを使って何人がリトアニアから脱出できたかは明らかではありません」
彼の妻の著書では6000人以上とされていたが、今はもっと少ないだろう。
現在、学者の間で受け入れられている数字は、2000人から3000人の間である。
解説
杉原氏が救ったユダヤ人の数が実際は何人なのか、私も知りません。
ポイントはこういった論争が世界で行われており、アジアで最も有力な英字新聞が「現在、学者の間で受け入れられている数字は2000-3000人だ」といっていることです。
こういった数字や議論は独り歩きします。
反論があるならば素早く反論せねばなりません。
よく「日本人は議論が下手だ」と言われます。
「反論しなくてよい。黙っていても事実は伝わる」という村社会的な意識もあるのでしょう。
しかし、議論の基盤となる国際的に流れるメインの情報に接していない、という事がもっと大きな理由と思います。
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