高齢者から運転免許をとり上げると“食糧不足”になる?精神科医「国民はマゾ」断言のワケ

Japanese Prime Minister Fumio Kishida attends a press conference during a EU-Japan summit, in Brussels, Belgium July 13, 2023Japanese Prime Minister Fumio Kishida attends a press conference during a EU-Japan summit, in Brussels, Belgium July 13, 2023
 

高齢者が起こした交通事故のニュースが目だつ昨今ですが、実際には自動車がないと生活できない、仕事もできなくなる高齢者は多いのが日本の現状です。メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』の著者で、長年高齢者専門の医師として従事する精神科医の和田秀樹さんは、病気でもない高齢者から運転免許をとり上げる日本政府の政策に疑問を呈し、高齢者から免許をとり上げることで農業人口が減って「食糧の安全保障」が脅かされている日本の行末を案じています。

まともな「安全保障」とは

テレビの情報番組を見ていたら、基幹的農業人口の7割が65歳以上の高齢者であることが明らかになった。

ピークは70から74歳である。

75歳以上もかなり多いし、このピークの70から74歳の人が今の老化を考えるとまだまだ働けるから、75歳以上の割合はもっと高まっていくように思える。

こう考えると、75歳以上の人間から免許を取り上げる政策はつくづく愚策だと思っていたが、安全保障上も問題だ。

75歳以上の人は認知機能テストを受けさせられるのだが、そのテストに落ちると、医師が認知症と診断した時点で免許が失効する。

長年の高齢者専門の医師として言わせてもらうと、認知症の人でも昨日まで運転ができているのであれば、十分に運転できる。

認知症の人に運転などできないという決めつけから免許を取り上げるというのは、この6月14日に成立した「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」にも反するものだ。

この法律では、国民の責務として、「国民は、共生社会の実現を推進するために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深めるとともに、共生社会の実現に寄与するよう努めなければならない」と明記されている。

この正しい知識というのは、認知症というのは、軽いうちはほとんどのことができるということで、だから認知症にかかっても仕事をやめさせずに共生していこうという発想になっているのだ。もちろん農業や漁業などは認知症になっても続けられる職業の代表格だ。

なのに認知症と診断されたら、重い軽いに関係なしに免許が取り上げられてしまう。

実は前にも書いたかもしれないが、免許が取り上げられると、トラクターの運転もできなくなる。

【関連】医師が告発。要介護の高齢者を増やす「軽度でも認知症なら運転免許取消」の実態

かくして、そうでなくても農業の就労人口が少ないのに、その主軸をなす年代の人から免許を取り上げ、農業人口をさらにこの政府は減らそうとしているのだ。

安全保障というのは武器だけ買っていればいいものではない。

食糧安保というのは、その中でもっとも重要なものの一つだ。

それなのに、アメリカに右に倣えで、ロシアと簡単にケンカして、ロシア産の農産物の輸入をできなくしたり、値段が高いものにしたりしている。

さらに円安で、もっと食糧の価格も高騰している。

これは原油だって同じことだが、さらに、免許の取り上げで、国内の生産まで減らそうというのか?

こんな政府に、ずっと投票する国民はマゾなのだろう。

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