日本が耳を塞いではならない、インドネシア「ジョコ大統領の言葉」とは

 

そのときのASEANの姿勢はより強化されているようだ。ジョコ大統領の「ましてや超大国間の対立の代理となってはいけない」という批判は、聴きようによってはとくに日本に向けた発言とも解釈できる。こんな重要な発信を「南シナ海やウクライナ情勢などをめぐる大国間の意見の隔たりは埋まらず課題を残した」という一言でまとめて報じるメディアは、正しく日本に情報を伝えたことになるのだろうか。

アメリカの意向に従い米中対立をASEANに持ち込み、中国への対抗を露骨に呼び掛ける日本の振る舞いに向けられるASEAN加盟各国から視線は冷たい。もしジョコ大統領の言うようにASEANが対立を避け成長にまい進すれば、いずれ経済的にも日本に肉薄することは想像に難くない。そうなったとき、経済的な意味だけでなく、地域の平和に貢献するという点でも日本を上から見下ろすことになっても不思議ではない。

同じような問題はG20サミットでも指摘されるだろう。問題は西側社会が「価値観を共有する」と期待するインドが、この会議で中国との対立を先鋭化させることを願う日本の姿勢だ。いわゆる「龍VS象」待望論だが、この考え方に見られる根本的な誤解は、インドが西側的価値観という陣営のために中国と対立するという幻想だ。

国境紛争やグローバルサウスのリーダーとしての地位の綱引きにかかわらず、中印関係には摩擦が尽きない。だが、それは昨日今日始まったことではない。さらにインドは自国利益のために中国と対立するのであって、陣営のために自国の資源を削ることはない。いうまでもなくアメリカの手先となる発想は待ち合わせていないのだ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年9月10日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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