中国では密輸で死刑。なぜ今ドイツは「大麻合法化」に舵を切ったのか?

 

ところがそのアムステルダムで、今年の5月中旬以降、屋外の公共スペースでのマリファナ吸引が禁止になった(コーヒーショップでは引き続き吸える)。その上、市の中心部では、木曜日から日曜日の午後4時以降は、酒類の販売も禁止。マリファナとアルコールの悪しき相乗作用を防ぐためだ。また、アムステルダムでは売春も合法で、飾り窓と呼ばれる地区が世界的に有名だが、それらにも、やはり5月中旬より制限がかかっている。

ヨーロッパ、特に北欧は、ここ50年ほども続いたリベラル政策の行き過ぎで収拾がつかなくなっており、今、急激な修正が始まっている。スウェーデンやフィンランドでは、すでに政権が保守に入れ替わり、オランダも近年、治安の乱れや犯罪に生活を脅かされた住人の苦情が絶えなかった。つまり、住民の生活を守るため、アムステルダム市もさまざまな規制を掛けざるを得なくなったわけだ。

ところが、そんな中、ドイツでは社民党政権が、これまで医療用などを除いては禁止されていた大麻の使用を、一定の条件下で合法にしようとしている。8月16日、その法案が閣議決定され、政府はこれを今年中に成立させるつもりだという。

ところが、この法案の中身がかなり非現実的。例えば、購入はこれから設置される予定の「カナビス・クラブ」に限ること。そして、購入できる量は、22歳以上の大人なら1日最大25g、ひと月最大50g。18~21歳は、ひと月最大が25gで、しかも、トランス状態を引き起こす成分T H C(テトラヒドロカンナビノール)の含有率が10%以下の製品のみ。

カナビス・クラブはいわゆる協同組合で、学校、遊園地、公共のスポーツクラブなどから200m離れたところに設置されなくてはならない。また、ここでは購入だけで、吸引は200m離れてから。さらにカナビス・クラブには、健康、および青少年保護の計画を作成し、中毒やその予防について広報するための職員を置かなくてはならない。

いったい全国に何か所のカナビス・クラブができるのかは不明だが、政府は、皆がそこにマリファナを買いに出向くと思っているのだろうか。また、これらの規則が守られているかどうかを、いったい誰が監督し、取り締まるのだろう。

一方、カナビス・クラブに行きたくない場合は、家で大麻を栽培することも認められる。ただ、雌株を一人3株まで(ジョークではない!)。

園芸の好きなマリファナ常用者がいないとは言わないが、3株を鉢植えで育てて、花びらだか、葉っぱだかを採って、乾燥させて、巻いて、吸う?典型的なお役所的アイデアだ。

ドイツでは、すべてのタバコの箱の外側に、世にも恐ろしい写真がデカデカと印刷してある。真っ黒になった肺やら、ぱっくりと口を開けた潰瘍やら、骸骨のようになって横たわっている人やら、まるで拷問写真のようで、目を覆いたくなるものが多い。まさか、マリファナの方がタバコよりも安全なわけはなかろうに、しかし、マリファナの危険性がこのように公に警告されているのは見たことがない。

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