140以上の国と会談。中国が見せた外交力と、分析できぬ日本メディアの実力不足

 

同じように留学生が増えているのはインドネシアだが、これも習近平が2013年10月、「海のシルクロード」を打ち出した国である。今回のフォーラムではインドネシアのジョコ・ウィドド大統領との会談は6番目に設定されている。

ちなみにフォーラムの始まった17日の午前中に行われた習主席の会談は、カザフスタンのトカエフ大統領を皮切りに、エチオピアのアビー・アハメド首相、チリのガブリエル・ボリッチ大統領、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相、パプアニューギニアのジェームズ・マラペ首相、インドネシアのジョコ大統領である。中央アジア、アフリカ、南米、欧州、南太平洋、そして東南アジアである。こうして並べてみると、中国が普段、日本とは全く異なる景色を見て外交をしていることを改めて感じさせられる。

日本のメディアは、フォーラムが「低調だった」と中国の思惑の空振りに焦点を当てて報じたが、本当にそうだろうか。例えば習近平と国連のアントニオ・グテーレス事務総長との会談では、グティエレスから「習主席が提唱した『一帯一路共同建設構想』は途上国の持続可能な発展を実現するための有効な手段を提示し、グローバルサウス協力の模範を示した」と評価された。

さらに「国連は多極主義を支持する中国の立場を評価し、習主席が提唱したグローバル発展イニシアティブを支持し、中国との協力をより深めていきたい」とも語っている。この時点で中国は少なからず大きな成果を得たはずだ。

国連を中心とした国際秩序を強く主張する中国は、国連を「核心」と呼び、アメリカを中心に西側先進国のつくる国際秩序と向き合おうとしている。

昨今の「グローバルサウス重視」という世界の潮流のなかで、国連という錦の御旗を得られれば広く発展途上国に網をかけられる。同時に上海協力機構(SCO)やBRICS(中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカの新興5カ国)がその役割を補足し、中間的な組織として東南アジア諸国連合(ASEAN)を位置付けている。

前者はカザフスタンの重視であり、後者はインドネシアへのアプローチだ──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年10月22日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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