米国で400万件。高齢者の手術後に使われる抗精神病薬・向精神薬の調査結果

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手術後には精神的に不安定になる傾向があり、特に高齢者の場合は、「術後せん妄」と呼ばれる状態に陥るケースが多くあるようです。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、術後の高齢者に使用された抗精神病薬や向精神薬を調査したアメリカの研究を紹介。2008年から2018年にかけての約400万件のデータから、使用される薬剤の主流が明らかに変わってきていると伝えています。

手術後の高齢者に対する抗精神病薬・向精神薬使用の傾向

手術後に不穏・興奮(あるいは逆に、活動性の低下)・幻覚・認知機能低下等の症状が変動を伴って出現する病態を“術後せん妄”と言います。このような精神状態悪化に対して、最近では非定型抗精神病薬を始めとする薬剤が使用される傾向にあります。

今回は、手術後の高齢者に対して、どのような薬剤が使用される傾向があるのかを調べた研究をご紹介します。

手術後の高齢者に対する抗精神病薬・向精神薬使用の傾向
Trends in use of antipsychotics and psychoactive drugs in older patients after major surgery

アメリカの一般病院や研究機関関連病院における研究で、65歳以上の高齢者の手術を含んだ4,098,431件の入院が分析の対象となりました。

かつては良く使用されていたハロペリドールなどの古典的抗精神病薬、せん妄をひき起こす可能性があると言われるベンゾジアゼピン系薬、比較的副作用が少ないと言われる非定型抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬等について、2008→2018年で使用日数を確認しました。

  • ICUにおけるハロペリドールやベンゾジアゼピン系薬の使用は低下していました(例:ベンゾジアゼピン系薬の一般病院での使用日数 261→136日/1000日当たり)。
  • 非定型抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、デクスメデトミジン(α2作動性鎮静薬)の使用は増えていました。

要約:『高齢者の術後に使われる薬剤は、かつて使用されていたハロペリドールやベンゾジアゼピン系薬から非定型抗精神病薬等へ変化している』

非定型抗精神病薬等が必ずしも安全とは言えないというデータもありますが、少なくともかつて主流だったハロペリドールやベンゾジアゼピン系薬を控える傾向は明らかなようです。

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