自民パー券ウラ金で“自爆”の自業自得。それでも野党が政権を奪えない「8つの理由」

 

政治家としての最低限のモラルが守られていない可能性も

更に、ここへ来て出ているのは「ワイロ性」ではなく「私腹肥やし」という可能性です。戦後における過去の「政治とカネ」の問題は、そのほとんどが「ワイロ性」が疑われるケースでした。何か「利権」があり、その利権を調整する「職務権限」のある人間に違法なカネが行くとか、選挙運動において許されないカネの流れが出てくるといった話です。

ですが、今回のスキャンダルでは、動いたカネのかなりの部分が「私腹を肥やす」つまり「ネコババして自分のポケットに入れた」という可能性が囁かれています。その場合は公職選挙法違反だけでなく、横領罪、そして儲けたカネに対して税金を払っていなければ脱税ということになります。

そこのところも、詳細が暴かれるべきです。例えば、政治家同士、あるいは支援団体との関係で「おごり奢られ」という関係があったとします。政治家の側も飲食費を出さねばならないことがある、そこでそのカネを用意する必要が出てきて、裏金という「文化」を作ってきたという歴史があるとします。

だとしたら、免罪されるわけではありませんが、少なくともその悪質性を判定する材料にはなります。例えば、その「おごり奢られ」の中で、ワイロ性というのが浮き彫りになるかもしれないからです。

だた、今回の事件ではそうではなくて「自分たちも豪華な飲食がしたい」とか「家族にも良い思いをさせたい」あるいは「親戚の経営する企業が危ないのでカネを作って助けてやりたい」などという、完全な公私混同、そのものズバリの「ネコババ」があるという可能性も否定されていません。仮にそうなら、政治家として、最低のモラルが守られていないわけで、だとしたら報道機関は徹底調査を行って事実を暴くべきです。

いずれにしても、隠したい動機があるとすれば、そのことこそが、違法性、反社会性そのものであり、またそれを放置することは政治への不信を増大させてしまいます。

報道によれば、特捜部が捜査の重点を置いている主なルートは3つだという表現がされています。3つのルートというと、半世紀前の「ロッキード事件」の際に、航空機の購入企業、取引を仲介した商社など、重要な関与団体ごとに「資金の流れ」の解明が試みられました。ですが、今回のものは全く違います。

1つは、安倍派の派閥としての不記載疑惑、2つ目は、安倍派議員の側の不記載疑惑、3つ目は二階派(志帥会)の派閥としての不記載疑惑なんだそうです。これでは、有権者の知りたい「闇のカネの流れ」そのものではなく、単に地検特捜部の作業区分に過ぎません。わざわざ「3ルート」などと「大げさ」な形容で報じていますが、中身は大したことないのです。

そうではなくて、とにかく誰からのカネで、誰に何の目的で流れたのか、あるいは本当に自分で個人的に使ってしまったのか、これを明確にすることは絶対に必要です。この点の追及がなければ、政治への不信感は改善しないと思います。

80%の世論の期待を踏みにじる野党

2つ目の議論は、野党の動き方です。自民党への批判というのは、現在はマグマのように「溜まっている」のではありません。そうではなくて、大型火山が大爆発している状態と言っていいと思います。にもかかわらず、野党は政権を取ろうという動きもしていないし、自民党内に手を突っ込んで政界再編をやろうという気迫も見られません。

世論調査をすると、内閣支持率も自民党への支持も、20%スレスレという危機的状態で、当に「火山は爆発」」しているわけです。なのに、野党がモタモタしているというのは、80%の世論の期待を踏みにじっているわけです。そう考えると野党も同罪と言えます。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 自民パー券ウラ金で“自爆”の自業自得。それでも野党が政権を奪えない「8つの理由」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け