自民パー券ウラ金で“自爆”の自業自得。それでも野党が政権を奪えない「8つの理由」

 

野党が政権を取りに行かず政界再編にも動かない絶望的な理由

では、野党はどうして政権を取りに行かないのか、自民党に「手を突っ込む」政界再編に動かないのか、そこには絶望的な理由がいくつもあります。読者の皆さまの議論の材料として、以下、8点ほど箇条書きにしておきたいと思います。

1)まず野党と言っても、それぞれに政治的立ち位置に差があり、共闘できない事情がある。保守の野党(維新、日本保守党)、中道の野党(国民民主など)、中道左派の野党(立憲、れいわなど)、左派の野党(共産党など)の4つに分けたとして、お互いに一緒に組める組み合わせはほとんどない。

2)野党を束ねる表のリーダーシップを取る人材、裏の調整をやり切るフィクサー人材のどちらも「ほぼ皆無」。

3)小選挙区では、いくら自民党のイメージが悪くても、自民党を飛び出して「クリーンな野党のイメージ」に看板を掛け変えたほうが選挙に通るという戦術が成り立ちにくい。まして、相手が統治能力もコミュ力もない専業野党なら尚更。

4)自民党でパージされている安倍派も、二階派も、グループとして、あるいは個人としてイメージダウンしているので、党を飛び出して議席を確保できるわけでもなく、離党して政界再編に加わるのは無理。例えば、安倍派が岸田にアカンベーして自民を飛び出して百田政党に合流という可能性は極めて少ない。同じく二階派が飛び出して、小池と組んで新党という可能性も非常に少ない。百田や小池としたら「ブランドが完全に傷ついた」安倍派、二階派とは組めない。

5)かといって、比較的クリーンな宏池会岸田派、平成研茂木派などは、一応主流なので飛び出す動機がない。本当は泥舟から逃げて政界再編に乗ったほうが議席を守れるかもしれないが、そんな行動力、構想力はなさそう。

6)例えば、岸田が電撃辞任して上川にスイッチ、そこでサプライズ解散というような可能性は、年初からある。野党としては、そこで与党が惨敗した場合に、連立に参加して「上のポスト」を狙うという可能性は計算しているはず。だとすると、下手に政界再編に動く必要はない。実にセコイ発想だが、玉木とかは相当に計算している可能性も。

7)立憲などは政権を担う「めんどくささ」から逃げて、専業野党で行くのが個々人のビジネスモデルとして快適で、政権欲など本当はないのかも。

8)維新は維新で万博準備難航で「看板に傷」という状態。とても再編の目にはならない。

そう考えると、現在の政治の混迷に関しては、野党にも相当な責任がありそうです。そのような観点から、今後の推移を見ていきたいと思います。年末年始に改めて皆さまと議論したいと思いますが、今のところのシナリオとしては、

「春に予算通して岸田が辞任、上川にスイッチして解散。自公惨敗で国民と連立。首班は玉木で、自民党総裁は上川が辞めて林。24年秋の自民党フルスペック総裁選では、菅が担いだ石破が勝利。石破は玉木首班を蹴飛ばすために、連立組み合えて維新を引き入れて総理に。玉木と宏池会には怨念が残って、ここでようやく政界再編?」

なんていうシナリオがありそうです。こうした迷走は外交も経済も傷つけるわけで、やってはいけないのですが、存外可能性としてはあるかもしれません。

このシナリオが狂うとしたら、例えば上川が人気化して続投、玉木が人気化して菅の突き上げに対抗というような可能性です。ですが、どちらも難しいのではないかと思います。

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