小林よしのり氏「日本を救うのはサブカルだけ」宮崎駿監督が反戦平和を捨てた『君たちはどう生きるか』の深い意義とは

 

宮崎監督のひそやかな“本音”に思うこと

実際に宮崎駿本人が何をどこまで意図したのかはわからないし、無意識で描いたのかもしれないけれど、よくこんな話をやったなあと思った。

何が何でも反戦平和主義だと主張して、積み木を構築していったって、どうせいつかは崩れるのだ。 そんなものに人生を賭けてどうするというのだ?

わしはそんな社会運動などやらないと思っている。 イデオロギーのために自分の人生を無駄にするなんてことはくだらないし、それよりは自分の人生を楽しむ方を取るという感覚になっている。 その感覚が、今回の宮崎駿の『君たちはどう生きるか』の感覚と一緒だったのである。

宮崎も長いこと、散々っぱら左翼の側に引っ張り込まれて、いろいろやってきたのだろうけれど、ついに最後にはイデオロギーが嫌になって、こんな積み木なんかもう要らねーわと放り捨ててしまったのだろう。

そういう心情がどこまで外人に伝わるのかわからないが、この映画はその奥底の根本の部分にそういう感覚が隠されているから、いい映画だとわしは思ったのである。

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それで、『君たちはどう生きるか』というタイトルを掲げておきながら、そのテーマに関して一切具体性を出さないというやり方は、さすがに強いなあと思ってしまった。 なるほど、そうすれば万人に抵抗なく受け入れてもらえるのだ。

わしだったら、どうしてもどこかに具体的な考えをにじませてしまうのだが、そうするとどうしても拒否反応を示してしまう人も出てくるから、そこがいけないところだなあと思った。

とはいえ、何も具体性をにじませないと、わからない人には全然何も伝わらないままになってしまうからなあと、わしはまだその葛藤の中にいる。 わしも80歳にもなれば、あえて何も語らないというやり方もできるようになるのかもしれないが、そのテクは本当に採用していいものなのかどうか、未だにわからないままである。

それはともかく、宮崎駿の『君たちはどう生きるか』は、すごく哲学的にいい映画だった。 これも日本人が日本人の心情を良く描いた映画であり、それが世界に通用するのだから、やっぱり日本のサブカルって凄いと再認識したのである。

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