『セクシー田中さん』声明合戦は「誠意」か「あざとい作文」か?脚本家「初耳」、編集部「寂しいです」に賛否…日テレだけが知る「誰が嘘をついているのか」

2024.02.09
by kousei_saho
 

小学館第一コミック局「寂しいです、先生」

一方、『セクシー田中さん』の原作が連載されていた『姉系プチコミック』編集部が所属する小学館第一コミック局(以下 コミック局)も同じく8日、同社公式サイトで、小学館本社とともに声明を発表。本社としてのコメント「今回のような事態となったことは痛恨の極み」「再発防止に努めて参ります」という出版社然としたものであったが、「作家の皆様 読者の皆様 関係者の皆様へ」として綴られたコミック局の文面は全体を通して感情にあふれるものだった。

冒頭に「芦原妃名子先生の訃報に接し、私たち第一コミック局編集者一同は、深い悲しみと共に、強い悔恨の中にいます」と記した後、ドラマの放送前に発売された『セクシー田中さん』単行本第7巻に掲載されている芦原さんのメッセージを紹介。重要箇所なので長くなるがここに引こう。

「『原作の完結前に映像化されることに対してどのように向き合ったのか』について、こう言及されています。

<まだまだ連載半ばの作品なので、賛否両論あると思いますが キャラやあらすじ等、原作から大きく逸れたと私が感じた箇所はしっかり修正させて頂いている>

<物語終盤の原作にはまだないオリジナルの展開や、そこに向かう為の必要なアレンジについては、あらすじからセリフに至るまで全て私が書かせて頂いてます。恐らく8話以降に収録されるはず。>

作者として、ごく当然かつ真っ当なことを綴られる中で、先生は<恐らくめちゃくちゃうざかったと思います…。>とも書いていらっしゃいました」

さらにこのことをもって、

「先の2023年8月31日付の芦原先生のコメントが、ドラマ放送開始日2023年10月22日よりも2か月近く前に書かれ、そしてドラマ放送開始前に7巻が発売されているという時系列からも、ドラマ制作にあたってくださっていたスタッフの皆様にはご意向が伝わっていた状況は事実かと思います」

としている。ここから判明するのは、相沢氏が脚本を担当する立場にありながら「原作」を読んでいなかったという事実だ。社会学者の古市憲寿氏(39)もX(旧Twitter)で次のように指摘している。

コミック局はこの後、同社のマンガ誌の読者や執筆中の作家らに向け

「プチコミック編集部が芦原妃名子先生に寄り添い、共にあったと信じてくださったこと、感謝に堪えません。その優しさに甘えず、これまで以上に漫画家の皆様に安心して作品を作っていただくため、私たちは対策を考え続けます」

と続け、声明の最後をこう締めくくった。

「本メッセージを書くにあたり、『これは誰かを傷つける結果にならないか』『今の私たちの立場で発信してはいけない言葉なのではないか』『私たちの気持ち表明にならぬよう』『感情的にならぬよう』『冷静な文章を……』と皆で熟慮を重ねて参りました。

それでもどうしてもどうしても、私たちにも寂しいと言わせてください。

寂しいです、先生」

「誰かがどこかでウソをついているとか…」

この声明を、業界関係者はどう読んだのか。元女性漫画誌の男性編集者はこのように語る。

「実は私自身も、担当外でしたが編集していた雑誌に執筆してくださっていた作家さんの急死を経験しています。今回の芦原先生のケースとはまったく異なる原因でしたが、喪失感は大きかったですね。ですから小学館コミック局さんのメッセージには心を動かされました。一緒に作品を作っていた方が亡くなったわけですから、感情が出ていても当然かな、と思います」

しかしこうも続ける。

「気になってネットの書き込みもいろいろ見たんですが、あざとさを指摘する人もいましたね。そうか、そういう受け取り方もあるのかと感じさせられました」(同前)

事実、コミック局の声明へのネットの反応は大半が好意的なものだが、元編集者の男性の言う通り「あざとさ」に着目した意見も散見される。ここではそれらの書き込みも含め紹介したい。

《今言えることを精一杯書いてくれていると思えたし、何より泣けた》

《こんなお涙頂戴的な作文に感動してるようじゃ作者も救われないよな》

まさに正反対の受け取り方だ。また、同じ部分に対してもこれだけの乖離もある。

《「寂しいです、先生」というのが素直な気持ちだと思う。すべての田中さんファンが編集部と同じ気持ちを共有できてるよ》

《「私たちにも寂しいと言わせてください」なんて同情を誘う言い回し、そのわりに核心部分には触れないという。あざとい》

この声明は、以下に代表されるように現役の漫画家からも大きな支持を得ている。

このような「支持表明」にも違った意見が上がるのもネットの世界だ。

《作家さんを安心させるのも編集部の仕事だし、実際に漫画家さんも好意的に受け取ってるんだからそれだけでも意味があるんじゃないかと思う》

《身内をかばうのは当たり前。編集者と漫画家の口裏合わせっていう可能性はないのか?》

あらためて男性編集者に聞いた。

「編集部と作家さんの口裏合わせっていうのはさすがにどうかと思いますが、脚本家さんの『知らなかった』に対応するように小学館サイドが『知ってたはず』と、両者が同じ日にコメントを出したのは気になりますね。あまり考えたくありませんが、誰かがどこかでウソをついているとか…」

こうなってくると俄然注目を集めるのが、ドラマを制作・放送した日本テレビの反応だ。

日本テレビに求められるトラブルの説明責任

日本テレビは芦原さんの急死を受け、すぐさまドラマの公式HPに「お悔やみ」を掲載。その中で、「映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております」と記している。

セクシー田中さん(日テレ公式ページ)

しかしその後は一言も発することなく沈黙を守り続けたままだ。脚本家と小学館の意見に食い違いが見られる中、「真相」を知るのは日本テレビだけであり、「誰がウソをついているのか」を知るのもまた日本テレビだけである。それでもなお沈黙を貫こうというのだろうか。

1人の尊い命が失われてしまった今回の『セクシー田中さん』を巡るトラブル。未だ説明責任を果たさない日本テレビの罪は重いと言わざるを得ない。

print
いま読まれてます

  • 『セクシー田中さん』声明合戦は「誠意」か「あざとい作文」か?脚本家「初耳」、編集部「寂しいです」に賛否…日テレだけが知る「誰が嘘をついているのか」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け