なぜ起業や新規事業立ち上げの達人は「失敗を責めたり悔やんだりしない」のか?一流アントレプレナーに学ぶトラブルの“有効活用”

2024.04.01
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起業や社内の新規事業を進めるに当たり、必ずと言っていいほど生じるトラブルやマイナス要因。これらの「失敗」を、起業や新規事業の達人と呼ばれる人は、どのように受け止め、処理していくのでしょうか。神戸大学大学院教授で日本マーケティング学会理事の栗木契さんは今回、彼らが失敗をいかに活用しているかについて分析。その上で、失敗をプラスに転じる際に重要となってくる視点について考察・解説しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール:栗木契(くりき・けい)
神戸大学大学院経営学研究科教授。1966年、米・フィラデルフィア生まれ。97年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。博士(商学)。2012年より神戸大学大学院経営学研究科教授。専門はマーケティング戦略。著書に『明日は、ビジョンで拓かれる』『マーケティング・リフレーミング』(ともに共編著)、『マーケティング・コンセプトを問い直す』などがある。

アントレプレナーはマーケティングの失敗をいかに活用するか

アントレプレナーが社会のなかでになう役割は、起業あるいは新規事業開発などを通じてイノベーションを実現することである。イノベーションは、新たな製品やサービスなどを通じて、高度な生活や産業を社会にもたらす。

アントレプレナーとはどのような人か。そこには、大別すると、新しい事業を個人あるは数人の仲間で起こし、社会を変えるイノベーティブな起業を実現していく個人アントレプレナーと、営利企業やNPOなどの組織のなかでの新しい事業の立ち上げなどにかかわりながら、新機軸の導入や事業の再構築などの新規事業開発に挑む社内(あるいは組織内)アントレプレナーがいる。

重要なのは失敗しないことではなく、失敗に学ぶこと

アントレプレナー研究が示すひとつの知見に、失敗の効用がある。個人の起業、あるいは企業の新規事業開発などにおいて、成功をものにしていくにあたって重要なのは、失敗しないことではなく、失敗に学ぶことである。

個人アントレプレナー、社内アントレプレナーのいずれにおいても、アントレプレナーが新しい市場などを開拓する際には、失敗から学び、失敗を活用することが重要になる。アントレプレナーが市場で新たな行動に踏み出せば、失敗は避けがたく起こる。しかし、失敗を恐れていては、アントレプレナーの行動ははじまらない。そして柔軟に視角を変えれば、失敗は新たな機会の宝庫ともなる。

起業や新規事業開発には失敗が避けがたい

起業や新規事業の達人とは、失敗しないことの名人ではない。近年アントレプレナー研究において注目度を高めるエフェクチュエーションの提唱者であるS.サラスバシーは、次のように述べている。

「長期にわたって持続的に成功するには、熟達したアントレプレナーが … 失敗と成功の両方から学ぶことが必要である」(『エフェクチュエーション』碩学舎、2015年、p.18、傍点筆者付記)

同書でサラスバシーが取りあげているのは、従前には存在しなかった市場の新領域を切り開くような起業や新規事業開発、たとえば、インターネットの黎明期における音声同時配信ソフトの事業化、民間投資による商業用の宇宙飛行船開発などである。こうした起業や新規事業開発では、過去の経験にもとづいた予測が通用しないことが多くなる。

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