従来の枠にとらわれない「フリーランス狂言師」の茂山千三郎さん。伝統芸能を引き継ぎながら新たな道を切り開く茂山さんのインタビューを今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』で紹介しています。
狂言が教える日本人の強さの源
江戸時代から続く名門に生まれながら、「フリーランス狂言師」として従来の枠に囚われない活動で狂言の新たな可能性をひらいている茂山千三郎さん。
3歳の初舞台から50年以上狂言の一道を倦まず弛まず歩んできた千三郎さんに、狂言が秘める力、そこから見えてくる古来日本人が大事にしてきた生き方についてお話しいただきました。
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──(師匠である)お父様との稽古で印象に残っている教えなどはありますか。
<茂山>
先程、口伝の話をしましたけれども、狂言は言葉や頭で理解するものではないんです。特に父は自分の背中を見て覚えろというタイプで、例えば、「目線は明後日の方向を見ろ!」「シュッと歩け!」で終わりです(笑)。論理的に何も説明してくれない。
あとは父の背中を見ながら、こうじゃないか、ああじゃないか、「倦まず弛まず」稽古を重ね、自分自身で気づいて体で覚えていくんです。
──芸の世界は、頭ではなく体で覚える。
<茂山>
なぜ体で覚えるのかというと、頭で理解したことは忘れますし、舞台上でいちいち頭で考えて動いていては遅いんですよ。
一方、体で覚えたことは一生忘れませんし、舞台でも阿吽の呼吸で対応してぱっと動けます。江戸時代の寺子屋教育で、「四書五経」を大声で素読させていたのもそうだと思いますが、伝統芸能でも武道でも学問でも仕事でも、日本人は全部体で覚えてきた。それがまさに日本人の強さの源泉だったんです。
ただ、体で覚える教育も、特に戦後、頭で理解させる西洋式の教育に全部塗り替えられていきました。
ですから、伝統芸能の伝承を通じて、いま一度体で覚える教育のあり方を見直し復活させていくことが必要なのだと思います。
──とても大事なことですね。
<茂山>
また、日本人の感性も同様です。能や狂言の作品には、自然の動植物がいっぱい出てきます。動植物を擬人化して、その気持ちを謡い表現していくわけです。ですから、かつての日本人は花や虫と会話ができたのでしょうね。
──ああ、動植物と会話が。
<茂山>
実際「風の便り」とか「虫の知らせ」という日本語があるように、日本人は……
※続きは最新号をご覧ください!茂山さんのインタビューには、
・フリーランス狂言師として新たな道を切りひらく
・「和儀」の普及で元気な日本を取り戻す
・芸は頭ではなく、体で覚えるもの
・見えないものにこそ人生の幸福がある
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