ところが、2020年8月、当時のアメリカのトランプ政権の仲介によって「アブラハム合意」が締結され、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化。この動きにバーレーン、スーダン、モロッコが続いたことで中東情勢は安定へと向かっていました。
しかし2022年12月、過激な極右勢力(シオニスト)と連立を組む第六次ネタニヤフ政権がイスラエルに誕生したことによって、状況が一気に変わります。パレスチナへの入植活動がどんどんエスカレートしていったのです。
例えば、武装したイスラエル軍が、突然パレスチナ人の自宅に上がり込み、強制退去させる。女性や子供が抵抗すればその場で射殺するということが日常的に行われるようになったのです。
実際、アラブ圏のメディアでは、「きょうは何人殺害されました」というニュースが毎日報道されていました。
そのような過激な入植活動に対し、ハマス側は何度も警告を発していましたが、ネタニヤフ政権は全く耳を貸しませんでした。ですから、10月7日の奇襲攻撃はこの鬱積が爆発したとも言えます。
また、ネタニヤフ政権は、イスラム教シーア派を国教とし「反イスラエル」を国是とするイランに対して、新たな軍事教義「オクトパスドクトリン」を策定・公表しました。
イランは核開発、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派などのシーア派民兵組織、スンニ派のハマスにも支援を行っているとされ、イスラエルと対立してきました。
つまり「オクトパスドクトリン」とは、タコの足であるヒズボラやフーシ派と戦っても意味がない、その足を操るタコの頭であるイランを叩かなければならないという軍事教義なのです。
ここに、私が「イスラエル側が大きな戦争を起こすだろう」と警鐘を鳴らした理由があります。
それから、ネタニヤフ政権が進めている司法制度改革にも……
※続きは最新号で。いま中東で何が起こっているのか、これから世界はどこに向かっていくのか、現地の情勢に精通する石田さんに分かりやすく紐解いていただきます。
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