核抑止が「新たな戦争の火種」になる皮肉。各国の“不信”と“軍拡競争”が「核兵器なき世界」を遠ざける恐ろしい現実

 

「その後」の交渉を難しくする「なし崩しの追認」

両氏の論考が指摘する最も重い部分は、西サハラとガザという、地理的にも文脈的にもまったく異なるふたつのケースに、実は共通のパターンがあるという点です。

それは、長期にわたる占領という現実を、「解消すべき違法行為」としてではなく、「管理すべき統治上の課題」として読み替えてしまうという、安保理の姿勢そのものです。

この“読み替え”が定着すれば、東部ウクライナに対するロシアの併合や、南シナ海における中国の進出、北キプロスに対するトルコの実効支配、そしてイエメンのソコトラ島に対するUAEの占領といった、他の係争地域における「既成事実」の追認にも、道を開きかねません。

これはかなり懸念すべき内容だと思いますが、どうでしょうか?

そのような状況を目の当たりにしたにもかかわらず、なぜ安保理常任理事国のロシアと中国が、こうした決議に対して拒否権を行使しなかったのでしょうか。

両氏の分析によれば、それはMINURSOの任期延長そのものを止めた責任や、ガザの停戦とパレスチナ人の苦しみを長引かせた責任を、国際社会から問われることを恐れたためだといいます。

つまり、良心的な理由で拒否権を使わなかった結果として、本来であれば大きな議論を呼ぶはずの条項が、なし崩し的に国際社会のお墨付きを得てしまうという、皮肉な構造がここにはあります。

長年、紛争解決の現場に立ってきた私自身の実感としても、こうした「なし崩しの追認」ほど、その後の交渉を難しくするものはありません。一度、力による現状変更が国際社会に受け入れられてしまえば、次にそれを覆すためには、以前よりもはるかに大きなコストが必要になるからです。

占領する側からすれば、時間さえかければ既成事実が国際法上の正当性に転化していくという成功体験を得ることになり、この成功体験は必ず他の紛争地域にも伝播していきます。

だから私は、国際法を単なる法律ではなく、「未来の交渉の土台」だと考えています。一度その土台が崩れると、次の紛争では、交渉そのものが成立しにくくなるからです。

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