核抑止が「新たな戦争の火種」になる皮肉。各国の“不信”と“軍拡競争”が「核兵器なき世界」を遠ざける恐ろしい現実

 

【イスラエル国内政治の混迷とアメリカの視線の変化】

イスラエル国内でも、10月27日に予定されている国会(クネセト)選挙を前に、政治の地殻変動が進んでいます。

世論調査では、ネタニヤフ首相率いる与党陣営(右派政党リクード、「宗教シオニズム」や「ユダヤの力」などの極右政党、ユダヤ教超正統派政党)が野党陣営を下回る支持率にとどまっており、アイゼンコット元参謀総長が率いる中道政党「ヤシャル」がリクードを上回る支持を集めているとの報道もあります。

ネタニヤフ氏は、ハマスの襲撃を許した指導者としての責任を問われる立場にあり、複数の汚職疑惑の裁判にも直面しているだけに、首相の座を失うことは政治生命の終わりを意味しかねません。野党側からは、危機を政治的延命の道具として利用しているという批判の声も上がっています。

ちなみに、仮に連立協議が失敗すれば、2019年から2022年にかけて経験したような連続選挙の再来もあり得るとの見方があり(実際にこの時には5度総選挙がやり直された)、専門家の間では、ネタニヤフ氏が野党の連立協議を妨害しながら選挙を繰り返す可能性すら指摘されています。

こうしたイスラエル国内の混乱と並行して、アメリカ社会でもイスラエル離れともいうべき変化が静かに、しかし着実に進んでいます。

ミシガン州の民主党上院議員候補であるアブドゥル・エルサイード氏は、「(アメリカ国内で)子どもたちが医療を受けられない状況が解決されていないのに、なぜ他国に戦車や爆弾を買い与えるのか」と訴え、有権者の支持を広げています。

これまで超党派で親イスラエルを貫いてきたアメリカ連邦議会も、2023年10月7日以降続くイスラエルによるガザ侵攻を境に、その足並みが崩れ始めました。

親イスラエルの牙城とされてきた民主党の予備選でも、イスラエルを巡る対立が激化し、有力なユダヤ系ロビー団体であるAIPACから資金提供を受けた候補が批判の対象になる場面が増えています。

また、伝統的に親イスラエルとされてきた共和党でも同様の傾向が見られ、バンス副大統領が「イスラエル政府にはアメリカ世論を操作しようとする人々がいる」と、異例ともいえる発言をしたことも話題になりました。

アメリカの政策シンクタンク、ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の調査によれば、2026年3月時点で50歳未満の共和党支持者の57パーセントがイスラエルに否定的な見方を示しているとのことで、若い世代を中心にした変化の大きさがうかがえます。今は8月ですから、その後の情勢の変化を受けて、その数字も変化しているのではないかと推測します。

10月の米連邦議会中間選挙で示される有権者の判断が、今後のアメリカの中東政策の方向性を占う試金石になりそうです。

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