核抑止が「新たな戦争の火種」になる皮肉。各国の“不信”と“軍拡競争”が「核兵器なき世界」を遠ざける恐ろしい現実

 

【西サハラとガザ-国連安保理は何を追認しようとしているのか】

ここで少し視点を変えて、法的な角度からガザ情勢を眺めてみたいと思います。

実はこの論点は、サウサンプトン大学のアンドレア・マリア・ペリコーニ氏と、ノッティンガム大学のヴィクター・カッタン氏という、国際法を専門とする研究者が提示した興味深い論考ですが、再度これを読み返していて、改めていろいろ深く考えさせられました。

2025年10月に採択された安保理決議第2797号は、西サハラの帰属を巡る国連西サハラ住民投票監視団(MINURSO)の任期延長を扱ったものですが、その中で初めて、モロッコが2007年に提示した「自治提案」が明示的に参照され、「現実的な解決策のひとつ」として位置づけられました。

これは「半世紀近くにわたるモロッコによる事実上の併合を、国際社会がなし崩し的に追認する内容」だと、両氏は指摘しています。

その背景には、1975年の国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見や、国連総会決議第1514号が確立してきた「武力による領土併合を認めない」という戦後国際秩序の大原則があります。

しかし、アメリカ、イギリス、フランスという安保理常任理事国5か国のうち3か国が、すでにモロッコの自治提案を「信頼できる現実的な基盤」として支持しています。

どうしてこのような事態になったのでしょうか?

ここにも国際政治における複雑な利害の絡み合いが影響しています。

アメリカは2020年、イスラエルとの国交正常化、いわゆるアブラハム合意との引き換えに、モロッコの西サハラ主権を承認済みであったため、今回、それを国連安保理の場で”追認”したのではないかと考えます。

ロシアと中国は決議第2797号の採決で拒否権を行使せず棄権にとどまりましたが、これはMINURSOの任期延長そのものを阻止した責任を問われることを避けるための判断だったのではないかと、両氏は見ています。

そして両氏は、これとまったく同じパターンが、ガザに関する安保理決議第2803号(2025年11月17日採択)、つまり通称“トランプ和平計画”を承認した決議の採決でも見られたと指摘しているのです。

安保理決議第2803号そのものも、丁寧に読み解くと興味深い“留保”が含まれていることに気付きます。

決議第2803号には「イスラエルはガザを占領も併合もしない」と明記される一方で、「テロの脅威が完全に収束するまで安全保障の境界線に部隊を駐留させる」という留保条件が付されており、これは事実上、ガザの安全保障状況をいつ「安全」と判断するかという主導権を、イスラエル側に委ねる内容になっています。

パレスチナ自治政府への権限移譲についても、「自治能力があると認められた場合」という条件付きにとどまり、パレスチナの自決権や国家建設は、あくまで「パレスチナ人の願望」として言及されるにとどまっています。

“権限移譲”についてのプロセスが具体的な行程として明記されていない以上、この“パレスチナ人の願望”がいつ実現するのか、誰にも保証はできません。

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