森会長という「木」を見て「森」を見ぬ、女性蔑視社会ニッポン

kawai20210210
 

ついには国際オリンピック委員会も「完全に不適切」との声明を出した、東京五輪組織委の森喜朗会長による女性蔑視発言。しかし森会長の発言及びその進退問題だけにフォーカスしていては、日本社会が抱え続ける問題の本質は見極められないようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、現在の日本の状況を「「森氏という“木”ばかりを見て、本当の“森”を見ていない」と痛烈に批判した上で、「本来議論されるべきは何か」について自身の考えを記しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

森氏という木だけをみて、森をみない日本

改めて言うまでもなく、森氏の発言及び記者会見への批判と怒りが広がっています。私はこれまで女性問題や男性問題、学歴問題、外国人問題などのコラムを書いてきました。ですから、さまざまな角度から言いたいことが山積であり、それぞれのテーマに絞り、ITmediaや日経ビジネスオンラインで言及する予定です。

なので本メルマガでは、ちょっと違う角度から私が感じている「違和感」を書き綴ります。

念のため断っておきますが、森氏の発言は言語道断であり、「東京五輪パラリンピック大会組織委員会の会長」という立場を全く「わきまえ」てない発言です。

森氏はこれまでも問題発言を繰り返してきましたが、JOC臨時評議委員会の場でいうべきコメントではない。そこいらの飲み屋でお仲間とクダ巻いてるわけじゃないのです。

ですから、森氏を擁護する気持ちはさらさらありません。懲りないお方だなぁとつくづく呆れます。

しかしながら、その一方で、多様性のまったくない、同質性の社会構造を保持している日本が森氏の発言により世界から注目を浴びていることは、ある意味起こるべくして起こったこと。会議では森氏に同調するような笑いが起きるだけで、誰もその場で異議を唱える人はいませんでした。

つまり、森氏の問題であって、森氏だけの問題ではない。なぜ、ああいう時代錯誤の発言をお気楽にし、それを笑い飛ばす輩がいるのか?「森氏という“木”ばかりをみて、日本という本当の“森”を見ない」方向に議論が進んでしまうと、もともこもなくなってしまうのです。

ところが、会長をやめるか?やめさせるべきか?誰がやめさせられるのか?だの、本人はやめるつもりだったのに「余人に代えがたい」との理由で慰留されただの、進退問題がばかりがメディアではとりあげられている。

過去の森氏の問題発言を並び立て、あたかも「森氏」だけの問題のような報道を繰り返している。それがどうにも私には解せないのです。

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