夫婦同姓違憲訴訟の最高裁判決、新聞各紙はどう伝えたか?

 

一種の統治行為論

【朝日】は1面記事の他、社説や社会面を含む7つの関連記事を置いた。ここでは、「夫婦同姓」について詳論している2面の解説記事「時時刻刻」に注目する。

見出しは「同姓規定 15人中5人『違憲』」。全員一致でないどころか、3分の1はハッキリとした違憲」論を採ったことを強調。続く見出しは「男女平等に根ざさぬ 3女性裁判官」となっていて、裁く側にも「当事者」が存在する特殊な事件であることを示している。

記事全体を一瞥した印象は、中ほどに入れ込まれている女性3人の写真が目を惹く。といってもこの3人は裁判官ではなく、自民党の女性議員。「夫婦別姓をめぐる自民党有力女性議員3人の意見」として、稲田朋美、高市早苗、野田聖子の3氏の意見を写真入りで紹介。夫を「野田」に改姓させた野田聖子氏が選択的別姓を推奨しているのが印象的。

記事の中では、「違憲」とした裁判官に注目し、その理由を詳しく紹介している。岡部喜代子裁判官は、女性の社会的進出の進展を指摘、「改姓で個人の特定が困難になる事態が起き、別姓制度の必要性が増している」とし、桜井龍子、鬼丸かおるの両裁判官も同意。多数意見が、問題性は「旧姓の通称使用で緩和できる」としたことに3裁判官は反論、改姓が原因となって「法律婚をためらう人がいる現在、別姓を全く認めないことに合理性はない」とした。

「違憲」判断を下した5人のうち、男性の山村善樹裁判官だけが、国の損害賠償責任も認めるべきだとした。法制審が選択的夫婦別姓制を盛り込んだ民法改正案を示したのは96年のこと。2003年以降は、国連の女性差別撤廃委員会も繰り返し法改正を勧告してきたことをみれば、「規定が憲法違反だったことは明らか」として、国会の怠慢も指摘している。

uttiiの眼

寺田長官は、「(夫婦別姓制という)選択肢が用意されていないことが不当だという主張について、裁判所が積極的に評価するのは難しい」として、「国民的議論、民主主義的なプロセスで幅広く検討していくことが相応しい解決だと思える」としているようだ。

これは、形を変えた統治行為論ではないか。

男女差別は、「法の下の平等」に対する破壊的な行為。現在の制度が男女差別を固定、拡大するモメントを含み、実際に被害が訴えられているにも係わらず、国会が動かないのであれば、裁判所は違憲判断を下すに当たって躊躇してはならないはず。憲法判断そのものを回避してきた最高裁の「伝統」、政治的な影響を恐れて引き籠もる言い訳としての「統治行為論」、その変形としての「立法府への責任押しつけ」論という、一連の判断回避の系譜が、ここでもまた示されたということか。残念ながら、《朝日》の記者も、「時時刻刻」の解説で、「『司法の限界』解決は国会で」と、裁判所の責任放棄を許してしまっている。国会の責任は当然としても、勝手に司法の限界線を引くのは如何なものかと思う。

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