学費免除に給料、医療保険まで。日米の大学院にある大きな格差

 

飴と鞭のアメリカ大学院

もちろん、日本の大学も最近は変わってきましたし、ちゃんと大学院のカリキュラム+査読論文をこなさないと博士号が授与されない大学もあります。

ここで僕は、日本の大学院よりもアメリカの大学院の方が良いという比較をしているのではなくて、そもそもアメリカの大学院は日本のそれと全くシステムが異なるということを強調しておきたいと思います。

平たくいえばアメリカの大学院は「めっちゃ厳しい」のです。ただそのかわり、日本とちがって「完全サポート」もしてくれます。僕が在籍したワシントン大学の免疫学科は、僕が大学院在学中の学費はすべて免除してくれたし(実際は僕の代わりに学科が大学に支払ってくれた)、普通の生活ができるだけの給料も出してくれたし、医療保険なども与えてくれました。僕がワシントン大学に在学していた間に免疫学科が僕に使った金額をすべて合わせると、なんと約3800万円にものぼります。それプラス、研究にはお金がかかります。それらのお金は、ローンではないので僕は一切返金する必要がありません。免疫学科が、僕に投資してくれたお金なのです。

こうして数字を改めて思い出してみると、アメリカっていい加減なところがありながら、一方でものすごく懐が深い部分もあり、そこは深く感謝しています。

一方、日本の大学院では大学院生は学費を払う義務があり、給料はもちろん出ません。学費を捻出するために学術振興会の奨学ローンでお金をかりて、後から借金を返すという大変な思いをしている人もいます。

こういったシステムのために、日本の大学側は大学院生を沢山受け入れることができます。なぜなら大学院生は学費を払ってくれるので、お金をもたらしてくれるからです。1つの学科に30名とか50名とか、100名を超える学科もあります。

一方、僕がワシントン大学の免疫学科に入った時は、クラスメイトが他に5人いました。その年は僕を入れて合計で6人しか合格せず、日本人では歴代で僕が初めてでした。本当にこれは幸運なことで、それまで色々な人に支えながら行った努力が報われたこともありますが、大学院受験の面接の時もワシントン大学の教授陣と話がしっくり合ったことが要因だったと思います。

>>次ページ 我らが東大の免疫学研究の世界での順位に衝撃

print
いま読まれてます

  • 学費免除に給料、医療保険まで。日米の大学院にある大きな格差
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け