「戦略の論理」を抑え込む「平和的台頭」
この世の中は、「行動」と「反応」で成り立っています。「原因と結果の法則」とも言えるでしょう。
ある男性が不倫という「行動」をした。それがバレると、奥さんからなんらかの「反応」があるでしょう。離婚を決意され、家族が崩壊する可能性すらあります。有名人であれば世間から厳しい批判にさらされ、社会的に「抹殺される」ケースもある。
さて、通常国は、「経済力」と「軍事力」を充実させていくことが「国益」と考える。これはまったくそのとおりで、正常な行動なのですが。もちろん、「周辺国」から「反応」が起こってきます。
ある国家が台頭し始めると、通常の場合はその国がいかにおとなしくしていようと、あるメカニズム、つまり「戦略の論理」というものが発動するようになる。つまり規模が大きくなり経済的に豊かになり、軍備を拡張するようになると、何も発言しなくても、他国がその状況に刺激されて周囲で動き始め、その台頭する国に対して懸念を抱くようになる。
(p20)
これが普通のケースである。ところが、「中国1.0」は「違った」というのです。
ところが「チャイナ1.0」は、このような「戦略の論理」を完全に押さえ込むことに成功した。他国は中国の台頭をただ傍観したまま、それに対して警戒的な反応を示すことは全くなかったからである。
ロシアもアメリカも、さらには日本でさえも、中国の台頭に対抗するためにそれほど軍備増強をしたわけではない。
(p19~20)
結果として「チャイナ1.0」は、中国の実際の台頭を平和裏に、しかも周辺国の警戒感を呼び起こすことなく実現したのである。
潜在的には1970年代後半から始まり、2000代初めから2009年末まで明確に採用されていたこの政策は、中国に経済面での富をもたらし、それに対する目立ったリアクションを起こさなかったのである。
(p24)
このように、中国の「平和的台頭戦略」は、世界三大戦略家ルトワックさんも感嘆するほど素晴らしいものでした。
ところが09年、「アメリカの没落」を確信した中国は「本性」を現し、「アグレッシブ」になっていきます。そして、ルトワックさんいわく、「自滅」し始めたのです。