一度は闇金に手を染めた元官僚が、年商120億円企業を成功させるまで

 

人気の新世代リサイクル~買取品はこうして売る

エコリングは買い取り専門で店に売り場が無い。兵庫県姫路市にある5階建ての本社の中は、大量の段ボールで埋め尽くされていた。全国の店で買い取ったもののうち、ブランド品は全てここに送られてくる。

中にはだいぶ年季が入ったものも。そこで社内には中古品をよみがえらせる専門部隊がいる。独自開発した企業秘密の漂白剤を塗っていく。バッグは裏返して隅まできれいに掃除。化粧直しが終わったら、今度は写真撮影。全体だけではなく細部も入念に撮っている。「汚れや傷を優先して撮っています。『こんなに汚れてると思わなかった』ということにならないように、あえて汚い所を優先しています」と言う。

撮った写真はネットにアップ。エコリングの最大の売り場はネットオークションなのだ。

2万6700円で買い取ったルイ・ヴィトンのバッグを1円からオークションにかけると、2日後、落札価格は4万2519円になっていた。ただ、全てがうまくいくわけではない。落札価格が仕入れ値を下回って大赤字になることもある。だが、たとえ赤字でも2日で売り切るのがエコリングのルールだという。

「いつまでも抱えていたら、赤字になるからって抱えていたら、次が買えませんよね。だから売り切ってしまう」と言うのは、エコリング代表の桑田一成。創業15年で年商120億円企業へと急成長させた。

エコリングにはネットオークションでは売れない品も多く持ち込まれる。何でも買い取るのだから、店の奥にはそうした品がたまっていく。

例えばブランド物じゃない古着は「ウエス屋に電話して、『いりませんか』と」(桑田)。

第二の売り先は専門の業者になる。「ウエス」とは雑巾のこと。業者は古着を買い取って裁断、工場などの油ふき用として販売しているのだ。

それでも売れないものはどうするのか。埼玉県にあるエコリングの倉庫には、関東地区の17店舗で買い取ったクタクタの中古品が集まる。使い古された食器、バラバラのおもちゃ……。こうしたものがまとめて箱詰めされる。

送り先はタイの首都バンコク。エコリングは5年前にタイに進出、5店舗を展開している。タイの店舗は日本の店と違い、商品が並んだ売り場がある。

第三の売り場は海外。日本では買い手がつかない中古品でも、海外では欲しがる人がおり、けっこう繁盛している。

日本から段ボールが届いた。中身は大量の中古靴。その中には、家族連れで店に来ていた少年から買い取ったスニーカーもあった。買い取り価格は50円だったが、売り値は何と300バーツ(約900円)。それをタイの女性客がお買い上げ。「日本の中古品は質が高いからいいのよ。ジョギングに使うの」と言う。

日本では行き場のない物も、ところ変わればまだまだ需要がある。「世の中の商材の価値を見つけ出す。我々が見つけ出すんです」と、桑田は語る。

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急成長リサイクル店の秘密は「高速回転」

東京港区のオフィスビルに、エコリングの第2の売り場がある。看板にはオークションの文字が。会場は異様な熱気に包まれていた。

セリにかけられているのは中古のブランド品。業者向けオークション「ハッピー東京オークション」には、リサイクルショップや質屋などが参加している。エコリングはこのオークションの1割以上を出品するという。オークションを実施している「ハッピープライス」の沼山英樹さんは「店舗数が多いので商品量が多い。かなり助かっています」と言う。

全国で買い取るから品数が多いし、状態のいいものを出せる。そんなエコリングが出品した商品がどんどん売れていく。エコリングが在庫として抱えるのは8日。とにかく早く売り切るビジネスモデルなのだ。

「高速回転ですね。うちは(小売平均の)3倍から6倍の早さで売っていく。逆に言えば利益水準は3分の1、6分の1の利益で運営できる。買い取りもおのずと高くなる」(桑田)

買い取りに特化した経営センスを培ったのは、桑田の異色の経歴だった。

1968年、兵庫県姫路市に生まれた桑田。少年時代の母とのやり取りが、桑田の人生を左右することになる。ソロバンを習いたいという桑田に、母は「やめとき、これからはパソコンの時代や」と言って、中古のパソコンを買って来てくれた。

まだファミコンもなかった時代に桑田少年は夢中でプログラミングを覚えパソコンのとりことなった

「ゲームを作り友達に配布したりしていました。でももう本当に単純なものですよ」(桑田)

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