一度は闇金に手を染めた元官僚が、年商120億円企業を成功させるまで

 

“元官僚”社長の壮絶人生から生まれたビジネスモデル

1993年、日大農獣医学部を卒業するが、当時は就職氷河期、働き口が見つからなかった。そこで国家公務員試験を受けてみると合格。旧郵政省の役人となった。得意のパソコンのスキルを武器に、出世コースを駆けのぼっていく。だが郵政事業の民営化が現実味を帯びて来ると、将来に不安を覚え始めた。

「不安があった、民営化されるかされないか。実はプログラマーとして生きていける自信もありました」

時はITバブル真っ只中。桑田は、郵政省を辞めて、ソフトを開発・販売する会社を起業。しかしあえなく失敗に終わる。「ジリ貧ですよ。お金がなくなって、闇金から金を借りた」(桑田)と言う。

桑田は生きるため、衣類や家電など身の回りのものを次々と、ネットオークションで売った。手元に残ったのはパソコンだけ。そんな生活の中で、桑田は「いまや家財の切り売りが一番の収入源。これをビジネスにできないか?」と、考えるようになった。

運も味方した。これを最後にと開発していたプログラムが、ある企業に2200万円で売れたのだ。それで借金を完済し、残った資金で設立したのがエコリングだ。

お金が足りなかったから売り場はなし。何でも買い取る店にしたのは自分もそれで助かったから。買い取った品物を人気になり始めていたネットオークションにかけると、どんどん売れていった。

売り先をさらに求めて、桑田は日本を飛び出した。中東のアラブ首長国連邦・ドバイに進出した桑田が売り込んだのは、中古の自転車だ。「日本語が書いてあると、高く売れる。品質がいい証拠になるんだ」と、現地の販売店店員は言う。中東に日本の「ママチャリブーム」を起こしたのだ。

さらに桑田はアフリカのウガンダへ。持ち込んだのは古着だった。珍しいのか冬物が人気となった。

どんなものでも買い取れば必ず欲しい人がいる桑田がどん底生活でつかんだビジネスの核心だ

鑑定士VSニセモノ~偽ブランド品を見極めろ

夜8時半、閉店後のエコリング浦和店には、まだスタッフが大勢残っていた。カウンターの上には、ルイ・ヴィトンやグッチなどブランド品がズラリ。偽物を見極めるためのトレーニングが、鑑定士デビュー前の若手社員たちに対して行なわれていた。鑑定士はエコリングの社内資格社員の7割は鑑定士だという。

千葉県出身の外戸口友希(21歳)は5ヵ月前に入社し、日々練習に励んでいる。「地元でお店を開いて店長やりたいという夢があるので、充実した毎日を送っています」と言う。

偽物だというルイ・ヴィトンのバッグだが、どこで判断するのか。ポイントは金具の部分。本物は角が丸いが、偽物は角張っている。さらにラベルに押された刻印。偽物は「R」のマークがつぶれていた。

リスクと隣り合わせの鑑定士になるには通常、10年はかかるとされる。しかし代表の桑田は、経験や勘を補う独自の鑑定士育成法を開発した。1年程度で一人前にすることができるという。

「僕は元公務員だから文章化が得意。世の中の職人さんがやっていることは、けっこう文章化できます。ニュアンスまで文章化できると思います」(桑田)

桑田が行ったのは鑑定のマニュアル化だ。500万点以上の商品データを蓄積し、バッグや時計など商品ごとに、偽物を見分けるポイントを写真つきで解説。また、商品の相場を一覧表にし、データを常に更新し続けている。

後日行われた試験に合格し、外戸口も鑑定士に。さらに勉強や経験を積んで一人前の鑑定士を目指す。

さらに桑田は得意のパソコンで、遠隔サポートシステムを作り上げた。インターネットを通じて大阪にいるベテラン鑑定士が、店にいる若手鑑定士にリアルタイムで助言するのだ。

「お客様にも『ベテランの鑑定士が見ています』とお伝えすることができる。その意味では安心感につながっていると思います」(遠隔サポート担当の籠谷知浩)

さらに桑田は鑑定のハイテク化も進めている。今、開発しているのが、「自動ニセモノ判定機」。時計などの品を機械にセットすると、本物か偽物かを判定する。

「時計に含まれている成分値を測ります。正規品と偽造品のデータを集めて、その違いを法則化しシステム化したものです」(籠谷)

詳細は企業秘密だが、金属の成分を分析して判定しているという。

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