今回の訪ロで話し合われたこと
ここまでの大まかな流れがわかったところで、今回の話にいきましょう。まず、ロシア側がもっとも求めている「経済協力」。「派手さ」はないものの、少しずつ進んでいるようです。
日露、医療やエネルギーなど経済協力22件合意
読売新聞 4/28(金)0:47配信
日本とロシアの両政府は27日、日露の官民などによる製薬・医療やエネルギーなど22件の経済協力の具体化で合意した。昨年12月に両国が一致した経済協力の具体化に向け、民間企業を中心とする事業が動き出す。
「22件の経済協力の具体化」だそうです。どんな内容なのでしょうか? 毎日新聞4月28日を見てみましょう。
医療分野では、三井物産がロシアの製薬会社「アールファーム」の株式約10%を今秋取得することで合意。医薬品製造を支援する。都市開発分野では南部のボロネジで、渋滞緩和に向けて自動で信号を制御する日本企業のシステム導入に向けて協力するほか、ウラジオストクで日本のICT(情報通信技術)を活用して都市環境整備を支援する。また、ロシアの産業の多様化・生産性向上の分野では、ロシアの自動車部品企業や素材産業向けの人材育成を支援する。
一方、エネルギー開発分野では、東京電力福島第1原発の廃炉を含む原子力分野での協力の具体化を引き続き検討することで合意した。
- 製薬会社
- 渋滞緩和
- 都市環境整備
- 人材育成
- 原子力
実に多様ですね。ロシアというと、すぐ「エネルギー」が頭に浮かびます。エネルギーもいいですが、それで儲かるのはごく一部。上のように、「ロシア国民の生活改善に貢献できる」協力がいいですね。
ちなみにロシアは、中国のように、「日本からの支援で○○が建てられた」ということを隠したりしません。むしろ「自慢」する。中国や韓国と違い、「反日教育」も「反日感情」もありませんので、ずっとやりやすいことでしょう。(汚職はありますが…)。
プーチンは朝鮮半島有事を警戒する
もう一つ重要な問題があります。そう、北朝鮮。プーチンは、「北朝鮮問題」をどう捉えているのでしょうか?
日ロ首脳、北朝鮮に自制要求=プーチン氏「対話継続を」
時事通信 4/28(金)5:44配信
【モスクワ時事】安倍晋三首相は27日のプーチン・ロシア大統領との会談で、北朝鮮の核・ミサイル問題に対処するため国連の場も含めて協力していくことで合意した。北朝鮮に対し、国連安全保障理事会の決議を完全に順守し、さらなる挑発行為を自制するよう求める。首相は拉致問題解決に向けた日ロ連携も呼び掛けた。
会談後の共同記者発表で、首相は「ロシアは国連安保理や(北朝鮮問題に関する)6カ国協議の重要なパートナーだ」と強調。プーチン氏は、トランプ米政権が北朝鮮への武力攻撃も辞さない構えを示し、日本もこれを支持していることを念頭に、「落ち着いて対話を続けることが必要だ。6カ国協議の再開は共通の課題だ」と述べ、外交努力の継続を訴えた。
基本的にプーチンは、「朝戦争反対!」。そして、「6か国協議再開」を主張しています。
ロシアの立場は、中国と似ています。まず第1に、ロシアは、「北朝鮮の核を『脅威』と認識していない」。なぜ? 北朝鮮のターゲットは、アメリカ、日本、韓国だからです。ロシアや中国は、「北朝鮮が攻撃してくる」とは、1%も考えていません。だから、「気楽」なのです。
第2に、ロシアは、「金正恩政権が倒されて、朝鮮半島がアメリカの同盟国・韓国を中心に統一されること」を恐れています。
トランプになっても、相変わらずロシアの「アメリカ不信」は強い。ロシアは、「アメリカは、西と東で、ロシア包囲網を強化している」と考えている。「西」というのは、欧州のこと。アメリカは、着々と「反ロシア軍事ブロック」NATOを拡大してい
ます。もともとロシアの勢力圏にあった東欧を吸収し、バルト三国を加え、ついにウクライナやグルジアも飲み込もうとしている。
東を見ると、日本や韓国のMDシステムを強化することで、「ロシアの核戦力を無力化」させようとしている。ここに、日ロの認識のギャップがありますね。日本は、「MDは、対中国、対北朝鮮だ」という認識でしょう。しかし、ロシアは、日本というより、背後にいるアメリカを信じていないので、過敏な反応になります。そして、アメリカが北朝鮮を武力で打倒し、韓国を中心に統一されることに反対である。それで、「6か国協議」というのですね。これは、事実上、「現状維持で行きましょう」と言っているのと同じです。
朝鮮半島問題がどうなるかわかりませんが、ロシアの協力はあまりアテにならないようです。