効いているのか? 前川前事務次官が「個人攻撃」されだしたワケ

 

前川前文科次官の反論

ところが文科省の前川喜平前事務次官が総理の意向を示す文書が文科省にあり、その意向により公平・公正であるべき行政が歪められた」と記者会見で明らかにした。つまり10年以上却下していた学部新設の話が、経済特区(小泉政権時代)から戦略特区構想に変わり、総理の長年の友人の学部新設の申請が出た途端、方針を180度変えてしまったことに異議を申し立てたのである。

退任したトップの前次官が「総理の意向を示す文書があったし自分も見た」というのは余程の覚悟がないと言いにくいことだ。しかも安倍首相はいまや5年間も総理の座にあり、衆参両院で与党の公明などと共に過半数を占める「一強の権力を有している。その安倍内閣に前官僚トップとはいえ批判をするのは余程の覚悟がないとできまい

案の定、政権側からは批判の嵐だ。菅官房長官、松野文科相、竹下国対委員長、二階幹事長らは「辞職した人についてのコメントは控える。再調査する意向はない」「あの人は地位に恋々としがみつき最終的に辞められた人」「適正な手続きにのっとって国家戦略特区の方法が進められていると認識している」「総理、官房長官の発言と辞めた官僚の発言どちらを信ずるか、と問われれば総理たちの方を信ずる」──など総攻撃といった様子で、「役人が何を言う」といった姿勢だ。むろん総理も働きかけを全面否定している。

文科省役人も援護せず

一方の文科省側は、表向きは「手心を加えたということはない」と政権側の意向に沿った言い方をしたり「言うのなら次官在職中に言って欲しかった」など、援護する動きは今のところない。前川氏も「後輩たちやお世話になった方々にご迷惑をおかけしたことになりその点では申し訳ない。しかしあったことをなかったことにすることはできないし、公平公正であるべき行政が政治の力で歪められることは看過してはならないと思った。今は官邸にモノ申す雰囲気が役所全体にない」と役人があるべき「吏道」を考え直したくて申し立てたと訴えている。

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