特に、座長の森田洋司教授(鳴門教育大学特任教授)は次のような意見を述べておられました。
「編集の大きな柱としては、リスクマネジメントの観点も大きな柱になる。人間が対応するので、過失、認識違い、無視、軽視、怠慢などが起きる可能性はある。これにいかに備えるか」
加えて「いじめは、いじめる加害者がいなければ被害はないと言われる。しかし、事例集においては、学校が第2の加害者とならないことも大事な視点だ」との考えを示されました。
実際、私たちのところに入ってくる相談をみても、教師の対応によって、被害生徒が不登校に追い込まれることも少なくありません。あるお母さんが「うちの娘がいじめられています」と担任に相談したところ、担任は、その子からのいじめの聴取もせずに、いきなり教室で「話し合いの時間」を持ちました。その結果、被害生徒は次の日から不登校になってしまったのです。その子にとって「話し合いの場」は加害生徒や周囲の生徒たちからの
「いじめではない、私たちこそ被害者。皆、迷惑している」
「あなたのここが、皆に嫌われている」
「欠点に気づいてほしいだけ」
等々の正当化の申立と、被害者の欠点を指摘され続けただけの1時間だったのです。
教師は、まずは被害状況を確認し、加害者を呼んで指導するという手順を踏まなくてはなりません。「話し合い」が個人攻撃になるのならば、介入して止めるのは当然のことです。しかし、こんなことも理解していない教師が現実にいるのです。森田教授のところにも、いじめを相談したら、よりひどくなったという事例が数多く寄せられているのでしょう。