あるとすれば、挑発合戦にともなう小規模な衝突が本格的な戦争の引き金になるケースだろう。
だが過去の事例から見る限り、アメリカは被害を最小限に食い止めるための有効な戦い方を見いだせるとは思えない。
1969年4月、朝鮮半島沖で米軍の偵察機が北朝鮮のミグ戦闘機に撃墜され乗員31人全員が死亡した。このとき、北朝鮮の空軍基地に報復攻撃する計画が検討された。だが、結局、アメリカは何もできなかった。
北朝鮮の軍事力を一挙に破壊しつくさないかぎり、韓国はもちろん、米軍基地のある日本も報復攻撃を受ける。米国は当然、核兵器を使うことなどできない。せいぜい近海に艦隊を送り込み、戦闘機で威嚇するしかなかった。
94年にも米軍ヘリが撃墜されたが、北朝鮮の軍事力を一気に破壊し全面戦争を避ける手立ては見つけられず、カーター元大統領が訪朝、金日成主席と会談して対話による解決をめざす路線が敷かれた。
その当時よりはるかに状況は困難になっている。日本を標的としたノドンは、とうの昔に完成し、200発以上にのぼる。しかも一か所にまとめて存在するわけではない。敵基地攻撃でミサイルのごく一部は破壊できても、残ったミサイルがどこから飛んでくるかわからない。しかもPAC3では、配備地点のすぐ上空しか守れない。一部の自民党政治家が言う「先制攻撃論」などナンセンスなのである。
冷静に考えれば、朝鮮半島で戦争など起こらないよう周到に問題解決をはかるしかないのである。ところが、トランプ、金正恩という、良識が疑われる人物どうしが戦いの引き金を引きうる当事者であり、予測不可能な危険性があるのも事実だ。
最近の関連報道も続々と緊張感を伝えている。
マティス米国防長官は10月9日、陸軍将兵らを前に講演し、北朝鮮情勢に関し、外交や経済圧力による解決に失敗した場合は「大統領が軍事的選択肢を必要とした場合に確実に実行できるよう準備を整えておかなくてはならない」と述べた。
(産経新聞)
朝鮮半島を取り巻く状況が尋常ではない。「死の白鳥」と呼ばれる米国のB-1B戦略爆撃機2機が10日真夜中、北朝鮮近隣上空に予告なしに出撃した。
(中央日報日本語版)
万が一、トランプ大統領が武力行使を決断した場合、日本政府がそれを止めることができるかどうか。安倍政権にその役目を任せても大丈夫なのか。有権者は票を投じる政党を慎重に選ばなくてはならない。