秋の出会いもの
この「走り」「旬」「名残」のうち「走り」と「名残」を組み合わせた秋の出会いもの、ハモマッタケです。
鱧の旬は夏です。京の夏は、鱧と祇園祭。鱧は、梅雨の雨を飲んで旨味を増すといわれています。祇園祭で賑わう7月が一番美味しいことから、祇園祭は別名「鱧祭」と呼ばれるぐらいです。京都の料理屋では、酢みそや梅肉でいただく鱧落としや鱧寿司を味わえる季節です。極上の鱧料理が揃うのが夏とされています。
しかし、鱧が本当に美味しいのは秋だという意見の人も多いようです。鱧が名残になると、走りの松茸と組み合わせて秋の出会いもの、ハモマッタケの土瓶蒸しになります。土瓶蒸しはこの時期に味わうことが出来る極上の料理です。あの透き通ったお出汁の汁は永遠に飲んでいられるぐらい優しい味がします。香り高い走りの松茸も最高です。出会いものとは、異なる季節に旬を迎える食材で、料理の相性が良い組み合わせのことを言います。
本来なら魚は秋の方が脂がのっていて美味しいはずです。ではなぜあまり魚の中でも有名じゃない鱧が京都の夏の旬の料理になったのでしょう? 鱧は6~7月の産卵前の時期に一番身がやわらかくて美味しいそうです。ところが、鱧にはもう一度秋に美味しい時期が来ると言うのです。松茸が走りの時期の鱧は産卵を終えとても脂ののった、弾力性のある身になります。しかし残念ながらこの秋の鱧のおいしさはそれ程知られていません。