子どもにとって「自由なクラス」が必ずしも良い環境ではない理由

 

お金の場合を考えればわかる。お金の貸し借りの場合、よほどの信頼関係がない限り、法とそれに基づく保証人が必要である。ましてお互いがよく知らない他人同士であれば、情や口約束だけではとても成立しない。裏切って逃げられても、信用した方がお金も心の面も大損するだけで、約束を破った者勝ちである。

そう考えると、特に学級づくりの初期段階では、子どもだけで自治するのはほとんどの場合、無理である。ただいつまでも教師頼りでは困るので、最初は手も目もかけ徐々に手放していくイメージである。

最初は手をかけ目もかけルールを守らせていく」という点は、子育てと同じである。子育てにおける難関は、あらゆるルールを身に付けさせるところである。そこが愛情なのである。最初は、排泄のルール。トイレトレーニングは、苦労する子どもはかなり苦労する(それが個性なのだから、違って当たり前である)。

厳しくいっても余計ダメ。根気強く励まし、成功を褒めながら「排泄はトイレでする」ということを教えていくしかない。愛情があるなら、できるようになるまで見守るし、「どこでしてもOK」とはならないのである。

他にも、眠る時間のルールや食事のルールなど、やるべきことは山積しており、親(特に母親)は休む暇がない。これらを総じて「躾」という。そこは、やり方は様々であれ、一つの訓練なのである。母親が躾のすべてを担うのは厳しく、そこは父親なり他の人も見守り、必要なところは口を出していくのが望ましいバランスである。母親が安心感を担保するとしたら、父親の役割は、適度な緊張感を与える存在となる。そのバランスが、子どもにとって居心地のいい家庭となる。特に思春期以降はこの役割分担が重要で、ここも徐々に手放していくというのが、大切なポイントである。

話がお金や子育てにまで広がってしまった。納得感を持って意欲的に取り組むルールづくり。適度な緊張感と安心感。ルールを担保する教師の役割の重要性。学級づくりにおいてのキーワードである。

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