教えちゃダメだ。部下がぐんぐん育つ「良き指導者の条件」

 

上記のコーチと選手との会話、やり取りの中でも、指導者等の在り方、役割や、人の成長を考える上で様々な学び、気づきがあるように思います。

まず1点目は、カーター投手に、豪速球投手をイメージさせることで、見える化している点です。理想となる姿や目指したい姿がイメージできないと、自分の中で、なかなか実感が持ちにくいものですね。

そこでセインコーチは、最近の最優秀投手の実名を出して、その投手の共通点をカーター投手に質問し、答えてもらっています。こうすることで、カーター投手に、豪速球投手として成功している姿をイメージさせるとともに、マウンドの上で、豪速球を投げて、活躍している姿もイメージ化、見える化していると思います。

「〇〇のようになりたい」というように、理想となる姿などをイメージすることは、在りたい姿へ向かう第一歩になるでしょうね。

2点目は、立場や実績だけに基づいて指導していない点です。セインコーチは、現役時代にピッチャーとして実績を出しており、また、選手から見ると、コーチという絶対的とも言える立場にいます。

ですから、カーター投手と接する始めの段階から「ジムお前は、ストレートが持ち味だから、今年の春のキャンプでは、ストレートだけ練習しろ。とにかくストレートを徹底的に練習してくれ」などと指示を出して、指導することはできたと思います。

しかし、セインコーチは、こういった指導方法をとらなかったのは、選手自身に自らの持ち味を気づいてもらって納得して欲しかったのではないかと思います。説得されてやることと納得してやることでは、その物事に取り組んだ後で出てくる成果なども違ってくるのではないでしょうか。

3点目は、これまでのセインコーチとカーター投手とのやり取りの全体を通じて言えることですが、個人個人を尊重し一人ひとりの持ち味を引き出し自信を持たせている点です。セインコーチも、最終的には、カーター投手に対して、「ストレートを徹底的に練習して、ストレートで絶対に三振を取れるぐらい練習してくれ」とコーチとしての方針を打ち出しています

しかし、その方針を打ち出すまでに、選手一人ひとりをしっかりと観察し、その選手の持ち味を把握し、選手との話し合いを通じて、信頼関係を築き、選手自らが自分の持ち味に気づくように促しています。選手は、自分で考えたり、気づいたりしながら、自分の持ち味などを見つけているので、コーチの方針に対しても納得して、自ら練習に取り組むことができるでしょうね。そうすることで、自分の持ち味が磨かれて、自信を持って本番に挑むことができたのではないかと思います。

カーター投手も、もともと素晴らしいストレートを持っていたと思うのですが、自分のストレートにいまいち自信を持つことができなかったことで、年間で5~6勝だったのではないかと思います。

セインコーチによって、自分のストレートが持ち味になることを再確認して、それを徹底した練習によって、自分のストレートの自信を持つことができたことによって、年間5~6勝勝だったのが26勝になり最優秀投手にもなったのではないかと思います。

セインコーチとカーター投手とのやり取りなどから、監督、コーチなどの指導者としての在り方、役割について考察してきました。ケーススタディの中での、セインコーチの選手に対する接し方などは、スポーツの監督、コーチだけではなく、人財育成を担うリーダーや、親御さんなどにとっても、示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 いしまるとものぶ 【発行周期】 週刊

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