本殿を右手に進むと、社務所の手前に”磐座登拝道入口”という標識があります。廊下の下をくぐると神泉と書かれた「亀の井」があります。この泉は、延命長寿、よみがえりの水として有名です。茶道や書道に活用したり、飲用として近所の方たちに利用されています。
松尾大社を建立した秦氏が酒造技術に優れていたことから、松尾大社は酒造の神としても有名です。昔から「亀の井」の水を酒に混ぜると腐敗しないといわれています。社務所には、水を持ち帰るための瓶も販売されているので、容器を持っていなくても大丈夫。
松尾大社では、重森三玲が作庭した庭園を見ることができます。約200個の青石を四国の吉野川から運び、昭和50年に完成したものです。この庭は3つの庭からなり、庭園の入口を入ると「曲水の庭」があります。曲水の庭は、王朝文化全盛期に平安貴族が慣れ親しんだ庭です。御手洗川の清流が流れる様子は、平安朝当時の空気を想像させます。
「曲水の庭」を抜けると「上古の庭」があります。こちらは社殿などはなく巨木や岩など自然を神とした太古の昔を表現しています。松尾山の磐座を模して造られています。奥に二つの巨石があり御神体の男女2神を現しています。庭全体に漂う荘厳な雰囲気を感じることの出来る場所です。
少し離れた入口近くにある庭は「蓬莱の庭」です。蓬莱は、不老不死の仙界のことです。蓬莱思想は鎌倉時代に流行し、作庭技術にも採用されてきました。このため「蓬莱の庭」は鎌倉時代に代表される回遊式庭園を取り入れています。池の周囲を回遊し、池に浮かぶ島々を眺めることができます。古刹にある枯山水や池泉回遊式庭園とは違い現代的な意匠なのがとても斬新です。
平安時代より前からこの地に存在する松尾大社とモダンな庭園とのコントラストを楽しんでみてください。
いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。
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