童門 「もう1つ挙げれば、武田信玄の人間を見る視点ですね。信玄は子供たちに軍談を聞かせるのが好きで、その時の反応を見るんです。そうすると4通りに分かれる。1人は話の内容に驚いて口を開けっ放しにして聞いている。2人目は信玄の顔を見ないで肩の辺りに視線を据えて聞いている。3人目は信玄の顔を見て、時々『ごもっともです』と頷いている。4人目は話の途中に『ちょっと厠に行ってまいります』と言って席を立っていなくなってしまう。
最初の子供は肝が小さくて話に圧倒されるタイプ、3人目は相手に気を取られて話の中身に意識が向いていないタイプ。4人目は自分にも思い当たるフシがあっていたたまれなくなるタイプ。それで信玄は一番頼りになるのは2人目の肩の辺りに視線を据えて聞いているタイプだと考えるんです」
三戸岡 「なるほど」
童門 「ただ、信玄が偉かったのは、4つのタイプをそれぞれに見合う使い方をしていることです。いわゆる適材適所ですね。臆病者として知られる岩間大蔵左衛門は合戦に行くのが絶対に嫌だった。馬に乗せても自分から落ちちゃう。そこで信玄は拠点である躑躅ヶ崎館の留守番を命じるんです。信玄が合戦から帰ると、館中がピカピカに磨かれていて『どんな人間にも使い道がある』と思ったといわれていますが、これもなかなかいい話だと思います。
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