残るは日本のみ。世界で失敗続くトランプ「ディール外交」の限界

 

米中首脳会談に向けて

ということで、今後の動きで重要なのが、米中首脳会談である。ここで、142項目の報告書を中国が出したことで、関税UPを一時停止にするとトランプ大統領がツイートしたことで、株価は上昇した。そして、企業収益も維持する可能性が出るし、世界経済の失速が遅くなる。まだ、関税の追加UPがないだけでは、まだ景気上昇とはならない。全ての関税UPが撤回されるまでいくかどうかだ。

中国の景気減速が明確化したことで、中国は貿易問題で大幅な譲歩をしたようだ。李克強首相も貿易の自由化や知財権保護を促進すると明言していたし、王岐山副主席も米国との調整に乗り出し、習近平主席がトランプ大統領の私的政策顧問をしているキッシンジャー氏とも会談し、心配して北京に飛んだブラックストーン会長スティーブン・シュワルツマンとも米中合意できる案の意見交換をしている。

その後、貿易協議を担当するムニューシン米財務長官と中国の劉鶴副首相が電話会談を行い、11月15日に報告書を提出した。

相当、中国は本気であるが、それに対して、ナバロNTC委員長は、ウォール街の民間人は、中国のエイジェントのようだと非難し、中国は明言するが実行しないと非難した。これに対して、クドローNEC委員長はナバロ氏の発言を否定して、中国への期待を表明した。

しかし、中国は台湾や南シナ海では妥協しないので、この部分で米中が揉めると、収拾がつかない。しかし、トランプ大統領は安全保障問題に対して冷淡であり、米国にとって経済的な特典があれば、折り合うと見る。どうも、裏でキッシンジャーと王岐山が両国間の調整をしていたように感じる。

ここで、米中が合意しないと、失望の株価暴落になることが確実であった。トランプ大統領の再選可能性は、グレイト・リセッションになったら、無くなっていた。当分、景気はどん底になり、世界経済は闇夜になり、混乱が増幅しかねない。これをトランプ大統領もクドローNEC委員長もムニューシン財務長官も心得ていたようだ。

今後は、中国が約束した142項目の実行を見て、貿易赤字が減ることを確認の上、今まで課した関税UPを撤回するかどうかは、まだわからない。

少なくとも、これ以上の関税UPがなくなったことだけは確かである。

しかし、ペンス副大統領は安全保障上で中国対抗を強調しているので、米国の正副大統領の立ち位置が違うことになっている。米国は2つの考え方が対立している。ペンス副大統領、マティス国防長官の対中国警戒とトランプ大統領、クシュナー上級顧問、ボルトン補佐官の対中東重視の2つである。

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