残るは日本のみ。世界で失敗続くトランプ「ディール外交」の限界

 

中東の混乱

クシュナー上級顧問は、サウジに対して原油増産を維持してほしいと依頼したが、サウジはOPEC諸国との協議で減産の方向にシフトさせた。

サルマン皇太子は、米国の陰謀に乗せられてカシュギ氏殺害になったと思っているので、米国の言うことを聞かない。米国とサウジの関係は、ぎくしゃくしたままだ。この状況でCIAは、カシュギ氏殺害をサルマン皇太子が命令したと断定。そして、米国もサウジ当局17人に対して制裁を課した。対して、トランプ大統領は、米国の公式見解としてCIAの判断を取らないとしている。

ここでも、CIAは副大統領の意向を受けているように感じる。中東での戦争を防止するために、イラン対抗勢力を作らないことのようだ。

サウジとの関係が改善しないことで、米国はトルコとの関係を正常化させる必要があり、トランプ大統領の意向で、エルドアン大統領が要求するギュレン師をトルコに引き渡す方向で検討を開始した。しかし、ペンス副大統領とマティス国防長官は、ギュレン師氏引き渡しに反対し、米国の自由主義擁護を守るようである。

米国はサウジのサルマン皇太子がカシュギ氏殺害で、米国の言いなりになると見ていたが、そうならずに、米国寄りではない対応になったので、緊急にトルコを米国の陣営に引き込む必要になったのである。

中東でイスラエルが孤立化したので、ハマスはガザからロケット弾を多数発射して、イスラエルを挑発している。ネタニエフ首相は、今イスラエルがガザに侵攻すると、ロシアとトルコなどが参戦する危険性を感じて、ハマスと停戦に合意したが、イスラエル軍は不満であり、イスラエルの国防相が抗議のために辞任した。連立を組む政党多数が連立離脱を表明。今後、選挙になる。イスラエルも不安定化した。

しかし、これは、ネタニエフ首相の情勢分析の方が正しい。クシュナー上級顧問は、現在のイスラエルの孤立化を防止するためにトルコをイスラエルの味方に引き入れたいようである。

米国のディール的な外交は、サウジでは失敗したようである。米国の要求を無視して、サウジはイエメン内戦からも手を引かない。

米国のディール的な外交は、欧州でも失敗して、世界で米国の言うことを聞く国は、日本ぐらいかもしれない。そして、OPECが減産に向かうので原油価格も1バーレル=55ドルから上昇し始めている。

しかし、今後の世界情勢を見る上で、米国内の2つの勢力の動きを追いかける必要がある。トランプ大統領は、マティス国防長官の味方であるケリー首席補佐官を更迭の方向であり、ケリー氏が抜てきしたニールセン国土安全保障長官も解任するようである。一方で、メラニア夫人は、マティス国防長官の敵であるミラ・リカーデル次席補佐官(安全保障担当)を解任した。

トランプ大統領とペンス副大統領の意見の違いが大きくなり、米国は意図せざる二正面作戦をしているような感じになってきた。

トランプ大統領は、ペンス副大統領を罷免できるが、ペンス氏は福音派の大幹部であり、もし、首にすると2年後の再選は無くなる

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