大声あげたら恥かく?専業主婦の年金が不公平ではない決定的証拠

 

というわけで、第三号被保険者について最後にちょっとだけ事例。先に言っておきますが、国民年金第三号被保険者には昭和61年4月以降の20歳から60歳の前月の480ヶ月間の間しかできない。

1.昭和29年6月30日生まれの妻(今は64歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

20歳になる昭和49年6月から昭和50年3月までの10ヶ月は短期大学に通学。この昼間学生期間は国民年金に加入する必要は無く、任意加入だったが加入せず(カラ期間)。昭和50年4月から国民年金に強制加入となったが、昭和54年12月までの57ヶ月間は未納。

昭和55年1月からサラリーマンの夫と婚姻したが、平成4年5月までの149ヶ月は専業主婦(一応短期労働者だったとします)。ただし昭和61年3月までの75ヶ月は国民年金には任意加入であったが、加入しなかった(カラ期間)。

なお、昭和61年4月から基礎年金制度が導入され、専業主婦も強制的に国民年金に加入した。平成4年5月までの74ヶ月は国民年金第三号被保険者期間として、将来の老齢基礎年金に反映する。

平成4年6月に離婚し、平成25年7月までの254ヶ月は国民年金未納だった。平成25年8月に6歳年上(昭和23年10月4日生まれ)のサラリーマンだった男性と再婚した。この再婚した夫には20年以上の厚生年金期間があるとします。ただし、この男性に本来なら配偶者加給年金が発生する64歳時点(平成24年10月4日)の妻ではなかったので配偶者加給年金はこの再婚夫には付かなかった。

普通は加給年金は65歳から付くものという認識が強いですが、この男性の生年月日だと原則として64歳から。下記の支給開始年齢のリンクの「定額部分の年金」の発生時点を見るので、割と昔の生年月日の方の場合は注意が必要。

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

夫は70歳(平成30年10月。なお、65歳になるのは平成25年10月)になるまで厚生年金に加入した。平成25年8月から再びサラリーマンの夫の専業主婦として国民年金第三号被保険者となり、本来なら60歳になる月の前月である平成26年5月までは国民年金第三号被保険者になれると思っていたが、平成25年9月までの2ヶ月間しか第三号被保険者になれなかった。夫は平成30年10月まで厚生年金に加入してるのに。

平成25年10月から60歳前月である平成26年5月までの8ヶ月は自ら国民年金保険料を納めないといけなかったが未納。

どうしてこの女性は60歳になるまでまで第三号被保険者になれなかったかというと、老齢基礎年金の受給資格を持ってる65歳以上の厚生年金加入者(この事例では夫)の専業主婦は第三号被保険者にはなれないから。厚生年金加入上限が平成14年4月から65歳から70歳まで引き延ばされたが、その時に第三号被保険者期間については引き延ばされなかったから。

この妻の年金受給資格期間をまとめる。

国民年金第三号被保険者期間76ヶ月+カラ期間85ヶ月(←学生時代の10ヶ月+昭和61年3月以前の75ヶ月)≧120ヶ月(10年以上)なので65歳から老齢基礎年金が貰える

  • 65歳(平成31年6月に受給権発生)からの老齢基礎年金額→780,100円(平成31年度満額)÷480ヶ月×76ヶ月=123,516円月額10,293円

なお、この妻は昭和41年4月1日以前生まれの配偶者なので老齢基礎年金に振替加算(この女性の生年月日だと年額56,784円)が付く場合がある。

加給年金と振替加算額(日本年金機構)

しかし、再婚した夫の配偶者加給年金の対象となる妻ではなかったので(夫が64歳時点の配偶者ではなかった)、振替加算は老齢基礎年金には付かない。

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