時間をかければ一生懸命と評価される社会と正反対な虫採りの世界

 

私も若い時は、10m上方の椎の花に止まって交尾をしているケズネチビトラカミキリ(体長5mmくらい)が見えたくらいの視力(3.5くらいはあったと思う)の持ち主だったのだが、今では目の前にネキが来るまで気が付かず、気が付いた時には網を振る間もなく飛び去っている場合が大半で、これでは沖縄に行っても無駄かもしれないなあ、と思いつつやってきたのである。

4月から入って採集している人に聞くと、今年の発生のピークは例年よりかなり早く、4月下旬だったという。それでもまだいないわけはないだろうというわけで、数年前にやっと1オスだけ採った(その時は、周りの人はほとんど複数採っていた)ポイントに行ってみた。

原生林を見下ろす尾根筋で、飛んでいるのはキオビエダシャク(日本産エダシャク中の最美麗種であるが、イヌマキの大害虫であるため、嫌われている。珍種であれば、蒐集家垂涎の種として、蛾屋の憧れになったろうに)ばかりで、ネキはおろか、カミキリムシは全く飛んでいない。1メス採れれば御の字だと思ってきたのだが、これでは目撃すら難しいかもしれないと、最初から諦め気味である。

結局3日間ポイントに通って目撃したのは2頭だけ、そのうちの1頭はふり逃がした。同じ場所でちゃんと採った人もいるのだから、やっぱりイモだな。歳はとりたくないとしみじみ思うが、生きているだけでもめっけもんか、とネキより頻繁に飛んでいた米軍の飛行機を見ながら呟くしかなかった。

image by: Shutterstock.com

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