さてここで、声色で自分の個性を作るという意味を、具体的にご理解いただくために、上述のように、誰々みたいな話し方になりたい、と要望された一例として、NHKの女性アナウンサーの声色を分析してみたいと思います。
NHK女子アナの話し方を参考にしたいというご相談が多いのは、私がアナウンサーだからということもありますが、聡明そうで落ち着いたあの雰囲気が、現代の働く女性にとって、ひとつの理想形だからなのだろうと思います。
では、先に挙げた5つの項目について、考えていきますね。
1、高低
では、中~低ですね。会話の経緯で高くなってしまうことはあるかもしれませんが、ひとつ言えることは、キンキンするような甲高い声が意識的に避けられていることは、間違いないようです。
もしかしたら採用の段階から、高低の声質は、判断材料になっているかもしれません。
2、強弱
強弱については、張ると緩めるの比率が、3:7、4:6ぐらいで、張らない声。民放の女子アナとくらべても、NHKの女性アナウンサーは、あまり張らない印象です。
3、ひっかける
NHKの女性アナウンサーの方の多くは、どちらかというと、ややひっかけて、丸い声を出そうとしているように、感じられます。これは前2項目のキンキンしない声、張らない声とも関係している意識だと思います。
声帯をピンポイントで震わせて、張った声を発声すると、どうしても聞き手に、通り過ぎる、強すぎる印象を与えてしまいます。
それよりも、優しくお伝えすることをイメージすると、ただピンポイントで張るだけではない、声帯をやや広めに使って、丸みを帯びた声を出すようになっているのだと想像します。
これはどの程度、指導されてやっているのかは知りませんが、先輩の声や、その声が流れる環境に親しんでいると、おのずとそういう発声法になっていくのかもしれません。
4、細い太い
NHKの女性アナウンサーの声の特徴のひとつは、落ち着きだと思うのですが、その落ち着きを生み出す要素のひとつが、この声の響く空間の使い方です。
間違いなく、落ち着いた声を出せるのは、体の中の、低めの広い空間を響かせるほうです。高く狭い空間でしか響かないと、どうしても焦っているような印象になってしまいがちです。
また、低めの広い空間に、どういう音を響かせるか、これは発音の仕方にも関わってきますので、それは次回の口調の話の中でお伝えします。
5、一つの音に含む息の量
一つの音に含む息の量も、当然、多めということになりますね。丸い声に、呼気「h」が含まれますから、癒し系ですね。