第三次世界大戦の開戦秒読み。米がイラン司令官を殺した真の目的

 

4.では、同じシーア派同士ということで、イランがイラクの南部を併合することがあるかというと、それはないでしょう。宗派は同じでも、ペルシャ語のイランと、アラビア語のイラクは全く別の国ですし、20世紀にはイラン=イラク戦争を延々と戦った同士でもあります。また宗教的にも、シーア派の始祖というべき、4代目カリフのアリー廟のあるのはイラクであり、イラクのシーア派には自分たちが本家という意識があるようです。これに対して、イランの信仰にはペルシャ文化が混ざっていたりするので、お互いに決して仲が良いとは限りません。

5.アメリカ国内の政治ということでは、動機は山のようにあります。まず、イランへの敵愾心を煽って共和党と支持層の団結を強化、その一方で、どうせ民主党は反対するので「臆病者とか反米的という批判を向けることが可能、まずそのような計算があることは容易に想像がつきます。そして、事態は完全にそのように展開しています。そんな中で、「弾劾審査に関するメディアの関心を吹き飛ばすという意味も含めると、年明けの話題を「ジャックする」ということでは、今回の事件はベストなタイミングを計算して起こしたというわけです。

とにかく、この「メディアジャックするというのが重要で、弾劾のニュースに加えて、2月のアイオワ、ニューハンプシャー目指して盛り上がる民主党予備選の報道を「消してしまう」という効果も計算していると思います。

6.これもアメリカの純粋に国内的な問題ですが、昨年12月以来、NYを中心に悪質な「反ユダヤのヘイトクライムが頻発しています。トランプは、長女夫妻がユダヤ教徒だし、ネタニアフのイスラエルとは強固な同盟だということで、親ユダヤだという姿勢を見せています。ですが、アンチ・ユダヤのヘイトが噴出してくるようだと結局は「差別主義者であるトランプの影響」という声が出てくる可能性は十分にあります。これを帳消しにするには、イスラエルの仇敵であるイランとの確執をエスカレートさせるということは効果があるわけです。

7.殺されたスレイマニは、イランを代表してレバノンやシリアのヒズボラを支援していました。例えばシリアでは、ヒズボラはアサド政権と共闘しています。一方で、トランプはアサド黙認の立場で、そこには矛盾があるわけですが、そういうことは、全く気にしないわけです。理念とか正義とかには全く興味のないことによる怖さというべきでしょうか。

8.カショギ暗殺以来、何かとギクシャクしていたサウジとの関係も大きいわけです。例えばイランとサウジのトラブルは延々と続いているわけですが、今回のスレイマニ殺害で、アメリカとイランの緊張が高まれば、それだけ「サウジはアメリカの同盟国という認識が強くなります。その効果も計算されていると思われます。

9.問題は、今回の余波で急遽増派が決定した3,000の米兵です。例えば、バグダッドの米国大使館の警備に行くというのですが、どう考えても士気は低そうです。目的がない、正義がない、イランの標的とされる危険はある、現地政府とも敵対、そもそも先輩たちが巨大な犠牲を払った親米的な新生イラクなど消えた中で、絶望的な気分を抱えている可能性があります。もしかすると、イランは、そこを狙って仕掛けて来るかもしれません。勿論、仮定の話ですが、仮にそうであれば非常にイヤな感じがします。

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