4日間で30分の映画を撮り切るために絵コンテを描く
お仕事で、ドラマ映像制作の依頼が来ました。2、30分ほどの短編作品で、僕は、監督と編集を担当。まあ、こういった話は途中で立ち消えになる可能性もありますが、作っていく工程が参考になると思うので、ご紹介していこうと思います。
自主映画と、頼まれた制作の大きな違いは、「依頼主の存在」です。自主映画は、すべてを監督の頭の中にとどめ、好きに進めればいい。しかし、依頼主がいる以上、監督は「頭の中を常に共有」することが求められます。監督(ディレクター)という職業は、「自分がやっていることを分かりやすく解説するスキル」も求められるんですね。
さて今回のプロジェクトは、シナリオはできあがっていて、予算がほぼ決まった状態。依頼主としては、気になることがいっぱいあるわけですね。
「どんな作品になるのか」
「どんな風に進めるのか」
「こちらの希望を言えるのか」
「どこで撮るのか」
「いつ撮るのか」
…何もかも分からない。
僕はこれらの疑問をすべて、バシッと答える準備に入りました。
★絵コンテを描くわけです。
絵コンテというのは本当に使い勝手のいい存在で、用途によっていろんな描き方ができます。この段階では、「撮影計画のための絵コンテ」を描いていくわけです。
これを描く前に、少し考えるべきことがあります。
※ ちなみに、大きなプロジェクトであれば、プロデューサーと演出、制作とか助監督とか、スタッフも細かく役割が分かれます。しかし、今回のような小さなプロジェクトだと、監督のすべき範囲はすごく広い。このあたりは、自主映画のノリと一緒、と言えます。僕も、いろんな仕事を兼務しながら準備します。だからこそ、この内容は皆さんにも役立つと思います。
■シナリオを<現実的に>読み解く
シナリオは目の前にあります。出演者リストも載っています。撮影場所の候補地も書かれています。依頼主としては、「じゃあその通りにやってよ」と考えるかもしれません。シナリオライターもそう考える傾向にありますね。
でも、監督としては、「それが実現可能か?」を検討しなければいけません。
シナリオは大事ですが、所詮、文字の表現です。監督は、文字表現を<映像表現>に変換する役目があります。例えばシナリオに、
「3人が喫茶店で会話している」と書いてあれば、監督は、
- 3人はどう並んで座っているか
- 3人それぞれ何を注文しているか
などといったことを考えるのです。シナリオでは、「そんなに大事なシーンじゃないから細かく詰めてない」なんてところでも、監督は、目に見える形で表現しなきゃいけない。
- 店内はどの程度混んでいるか
- どんな店内か
そんなことにも思いを馳せます。仮に、本当に大事なシーンじゃない場合、
- 喫茶店という設定を変える
- 喫茶店じゃない場所で撮る検討
なども検討する必要があるでしょう。シナリオライターと監督の見る世界は異なるんです。「喫茶店」というのはシナリオを書くのにとても便利な設定。でもね、実際に撮るとなるとかなり面倒な設定なんです。