そこで、いろんな議論をして生み出されたアイデアが、その百人の女性に統一した単色の制服を着せるアイデアです。そこでYMOの有名なアルバムジャケット『solid state survivor』からイメージした真っ赤な人民服のような制服を着てもらう様になったのでした。そして司会の中居さんも、私服ではなく、番組のキャプテンとしてのイメージを出すために、パイロットや船長のような制服を着てもらうことになったのでした。
こうして、番組は開始されるのですが、しばらくしてまた新たな構造的な問題にぶちあたったのです。それは、まさに番組当初の構想で始めたその100名の女性のさまざまなエピソードトークが、スタジオでしゃべってもらっても、ぜんぜん興味深いものにならないのです。
「これはどうしたことか?」「やはり、さんまさんじゃないと上手く一般人はいじられておもしろくならないのか?」そんな喧々囂々を重ねたあげく、我々スタッフが出した結論は、その100名の女性が、同じ制服を着ているために、その一人一人の個性が見えづらくなって、どんなにトークを頑張っても、そのおもしろさが発揮できないことがわかったのでした。
その赤い制服の百人の女性たちはやがて“アカ”と総称されるようになりましたが、それが表象するように、つまりエピソードトークとは、そのしゃべりという聴覚的内容だけでなく、その人となり、容姿や立ち居振る舞いの視覚的外容がミックスされ得て、はじめて視聴者にそのおもしろさが伝わるものなのでした。こうして、『金スマ』は、はじまった当初のご祝儀高視聴率は、やがて内容が凡庸になっていくと、ジリジリと視聴率低下を余儀なくされていったのでした。
こうして、そこから1年半あまり、試行錯誤が続きます。どんな企画をやると視聴率が取れるのか、それこそVTRロケ企画も、スタジオ企画も、いろいろやって見ました。そしてやがて、「金スマ波乱万丈」という、有名女性の人生の悲喜こもごもを再現VTRとスタジオでのトークで繰り広ける企画として誕生し、人気を博していくのです。
つまり、「金スマ波乱万丈」は、当初の想定だったエピソードトークの内容を一般人から有名人に変更し、そのエピソードを一過性のワンエピソードとしてまわしトークのタネとして使用するのではなく、その女性の人生という波乱万丈のストーリーとして、ドラマの様に再現するという構成に発展していったのでした。こうして、今も続く『金スマ』は人気番組になっていったのでした。
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